ホメ名人は「素晴らしいね」「頭いいね」とは言わない

「認める」「共感する」のあとは、いよいよ、本丸の「ほめる」です。

ほめるときは、人が簡単に変えることができない「特徴」より、「行動」をほめたほうが相手のやる気を刺激しやすいと言われます。知能や運動神経など固有の能力よりも、人の努力や戦略、プロセスをほめたほうがいいということです。

ある研究によれば、こうした「プロセスほめ」は内的なモチベーションを高める一方で、「人ほめ」では、子どもたちが失敗に固執したり、恐れたり、簡単にあきらめたり、自分を責めたりする傾向が出やすいこともわかっています。

「鉄板ほめ言葉」は要注意


すごいね
エライね
素晴らしい
いい子ね
おりこう
頭がいいね

という「鉄板ほめ言葉」も要注意。たんなる「人ほめ」になってしまっているからです。そこで終わらせず、プラスアルファで、評価の理由を指摘してあげましょう。ちょっとした言い換えで、「人ほめ」を「プロセスほめ」にすることができます。

絵を描くのが上手ね

とても表情が豊かな絵を描いたね
頭がいいのね

一生懸命、取り組んだのね
数学が得意なんだね

この難しい問題をよく解けたね

つまり、

× あなたは○○○なのね

と決めつけるのではなく、

○ あなたは○○○をしたのね

というように、形容詞や名詞を動詞にして、成果や実績をほめてあげるといいということですね。

写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです

「結果」よりも「プロセス」をほめる

「『大きな言葉』を『小さな言葉』に、『抽象』を『具体』に」手法は、ほめたり感謝したりすることにも効果的です。

岡本純子『世界最高の伝え方』(東洋経済新報社)

「何か、大きな成果を出したら、ほめる」というよりは、日ごろから相手の行動をつぶさに観察し、小さな進化や努力に気づき、すぐに、具体的に、気持ちを込めて認め、ほめていくのです。

「テストで学年トップになる」「仕事で大型受注する」などゴールを高く設定しすぎるあまり、働きや成果を認めたり、ほめたりする回数が極端に少なくなってしまっているというのが、日本人の特徴です。

高すぎる基準・ハードルを下げて、ほめる頻度を増やすようにしましょう。先ほど、「『人ほめ』よりも『プロセスほめ』」の話法を紹介しましたが、「結果」よりも「プロセスほめ」もおすすめです。

大きな結果だけではなく、途中の細かいプロセスに注目し、小さな変化や進化に気づき、承認していくのです。


ゴミを出してくれて助かった!
お皿をとってもきれいに洗ってくれたね
ジェスチャーも自然で、堂々としていたね
今日は、声がよく出ていたね

といったように、ほんの小さな変化も見逃さず、承認し、感謝し、ほめる。小さな肯定の積み重ねが、相手のやる気を引き出していくのです。