岸田内閣の花粉症対策でハゲ山が加速する

わが国の森林・林業の最大の問題は、皆伐された跡地では、3割しか再造林(苗木を植えて林を育てること)されていないことだ。伐採された林地のほとんどが植林されず裸地となっているのである。

この春に岸田文雄総理は突如、「花粉症は多くの国民を悩ませ続けている社会問題」と発言し、対策を求めた。5月末に取りまとめられた花粉症対策関係閣僚会議の方針には「スギの人工林の伐採面積を現在の年間5万ヘクタールから7万ヘクタールに広げ、10年後にはスギの人工林を2割程度減少させる」とある。ハゲ山はさらに増加するだろう。

出典=林野庁「再造林の推進」(令和2年10月)より

再造林されない原因は「立木価格」の低迷

なぜ、再造林は進まないのか。

林野庁もただ手をこまねいているわけではない。費用の8割を補助するという高率の補助金を用意し、再造林を促している。それにもかかわらず、伐採後再造林されている面積は3割にとどまっているのだ。

再造林されない原因は、立木価格の低下にある。

立木価格は、製品価格の1割程度であり、また丸太価格に占める立木価格の割合は1980年代の6割から2割程度へ低下している。森林所有者(山林経営者)の平均所得は11万円に過ぎず、再造林への投資が難しいのだ。

図版=筆者作成
出所=2021年度森林・林業白書