「アイスは太りやすい」というのは幻想

消費者としては添加物や価格以外にも、乳脂肪が多く含まれるアイスクリームは「太りやすい」と心配になるかもしれない。しかし「アイスクリームは太りやすい」というのは幻想だ。参考までに、「Dear Milk」は265kcal(130ml)、「MOW」は249kcal(140ml)、「ハーゲンダッツ」は244kcal(110ml)。ラクトアイスの「エッセル スーパーカップ 超バニラ」は374kcal(200ml)と、アイスクリーム類よりカロリーは高い。 

写真提供=明治
「明治 Dear Milk」(130ml)希望小売価格:216円(税込み)

カロリーの側面だけでなく、「牛乳や乳製品に含まれる脂質は比較的太りにくい」と大和田医師は言う。

「牛乳の脂質には中鎖脂肪酸といって、ブドウ糖と同じように吸収が早く、エネルギー源としても利用できる脂肪酸が豊富に含まれます。最近ではMCTオイルとしても有名ですね。身体が利用しやすい脂肪酸のため体脂肪になりにくいですが、アイスには糖類も含まれていますから麺類やごはんに追加すれば肥満を悪化させてしまいます。中鎖脂肪酸にサポートしてもらうような意識で、軽い運動を習慣化しましょう」

また中鎖脂肪酸は認知機能の低下を防ぐという報告もある。

寝る前に毎日「ラクトアイス」を食べると脂肪肝リスク

さらにアイスクリームには「卵黄」が含まれるが、第4回の「納豆」で述べたように、卵には「コリン」という栄養素が含まれる。2019年、世界トップレベルの米臨床栄養学会雑誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・クリニカル・ニュートリション』では、コリンの摂取が多いほど認知症発症リスクが低下し、記憶機能のパフォーマンスが向上すると発表されている。

このようにアイスクリームにはエネルギー源のブドウ糖(砂糖)に、特徴的な脂肪酸、卵と健康にいいものが含まれる。

管理栄養士で名古屋経済大学准教授の早川麻理子氏

対してラクトアイスは体の負担が大きい。ただちに健康を害するものではないが、食べ続けるのであれば原材料に「果糖ぶどう糖液糖」「ぶどう糖果糖液糖」「果糖類」「異性化液糖」などが含まれないものを選んでほしい。近年、日本ではアルコールを飲まない人の「脂肪肝」(中性脂肪が肝臓内に多く蓄積する状態)が増えているが、そのリスクを高める恐れがある。脂肪肝は、男性は30歳から、女性は閉経以降に急増するという。管理栄養士で名古屋経済大学准教授の早川麻理子氏がこう話す。

「肝臓に脂肪が沈着するだけでなく、進行すれば肝硬変や肝臓がんになることもあります。糖質の中でも脂肪肝になりやすいのが果糖で、中でも加工食品に含まれるものが危ない。例えば寝る前に毎日、果糖ブドウ糖液糖が含まれたアイスを食べ続けたら、非常にリスクが高くなるでしょう。食べる頻度には注意してほしいと思います」