慈悲の心で後進を育てる
ちなみに後の大乗仏教の経典で「慈悲」という言葉が出てきます。
「慈」とは相手に対して楽を与えること(与楽)であり、「悲」とは相手の苦しみを取り除くこと(抜苦)と言われています。
もしあなたが引退して、比較的自由で余裕のある生活を送ることができるのであればなおのこと、60代からは慈悲の心で若い人に向き合ってみてはどうでしょうか?
彼らが何か悩んでいたら相談に乗る(抜苦)。
お酒を飲むときにはお金を出してあげる(与楽)。
その他様々な形でサポートや支援をして、若い人の成長に力を貸すのです。
たとえばサークル活動や趣味の活動、勉強会や講座などで知り合う若者たちもいるでしょう。そういう人たちに慈悲の心を意識しながら向き合う。
残りの時間を自分の幸福と満足だけに使うのは、なんだかもったいない気がします。
後進を育てる。自分の得た知見を次世代に伝える。これからの世代のために、何かを残すという意識で、ぜひブッダの慈悲の心を思い起こしてほしいと思います。
「後世畏るべし」
「最近の若い奴は」というのは、いつの時代も年長者の口癖です。
たしかに経験値はまだまだだし、なんだか頼りなく見えてくるかもしれません。
しかし、広く世の中を見渡してみると、実は若い人たちの方が、どんどん昔の世代を追い越している現実があります。
かの孔子が残した言葉に、「後世畏るべし」というものがあります。自分たちの後の世代は、どれだけ成長するか分からない。その可能性は計り知れないから、畏れるべきであるというのです。
さすが孔子だけあって、「最近の若い奴は……」なんて安易に口に出すことはありません。その逆で、若い人ほど侮れないぞと言っているのです。