同じ介護離職でも独身女性は年金保険料を払っている

また、連合の芳野友子会長も6月15日の記者会見でこう言っている。

「例えば女性が親の介護で仕事を辞めざるを得ないとなった時に、結婚している人は2号から3号に行くことはできますが、結婚していなければ第1号になります。どういう人生を歩むか、結婚している、していないかだとか、3号でも死別なのか離別なのかによってこれが変わるということ、ライフスタイルによって女性の位置付けが変わってしまうことは、不公平な制度ではないかと思っています」

写真=時事通信フォト
こども未来戦略会議を終え、報道陣の取材に応じる連合の芳野友子会長=2023年6月1日、首相官邸

芳野会長が言うように同じ介護で離職しても結婚していない人は第1号被保険者(自営業・フリーランス等)となり、毎月、国民年金保険料(1万6520円)を支払わなくてはならない。一方、第3号被保険者はその分を免除される。

よく「妻の分の保険料は夫や会社が支払っている」といわれるがそれは間違いだ。給与から天引きされる年金保険料率は労使折半で一律18.3%であり、単身者も共働きの夫婦も同じ料率だ。要するに夫を含む共働き夫婦や単身者が支払う国の厚生年金の財源から一括して支払っているという建て付けになっているだけだ。夫や会社が妻の分を加算した保険料を支払っているわけではない。

「130万円の壁」のために、独身女性の時給が上がらない

もう1つの第3号被保険者制度の問題は「女性の活躍や賃上げを阻害している」ことだ。制度の適用を受けるために、あえて収入が増えないように労働時間を調整する「就業調整」だ。第3号被保険者の適用範囲内である年収130万円未満に抑えようとする年収の壁によって、人手不足や賃上げの抑制につながっている。

今は働きに出る主婦パートは多い。しかし収入を適用範囲内に収めるために年末近くになると、勤務時間やシフトを減らす人が増えることは今では風物詩にさえなっている。もちろん就業調整する人を責めるつもりはない。本来ならもっと働けるはずなのに、制度があることによって、結果的に活躍の機会を阻んでいることに問題がある。特に今のような人手不足の状況ではパートが多く働く産業に支障を来す可能性もある。

それだけではない。第3号被保険者の適用範囲内に収めようとすると、時給が上がらなくても良しと考える人が多くなるだろう。経営者にとってはありがたい話であるが、割を食うのが近年増加している未婚者など単身者やシングルマザーのパート労働者だ。夫の扶養に入っている既婚者とは違い、自身で生計を立てている人にとっては時給が上がらなければ、いつまでも苦しい生活から抜けられなくなる。