「叱って育てる」から「褒めて育てる」へ

体育会系世代が“モンスター”と感じる若者が増えた背景には、ゆとり教育と共に到来した「称賛を賞賛する」社会の影響が多分にあります。

「子どもの個性を伸ばせ!」「個性を潰すな!」という掛け声のもとスタートしたゆとり教育の右にならえとばかりに、家庭で会社で、親子関係で、上司部下関係で、めったやたらに褒めることが推奨されました。

それまでの日本社会は「叱って育てる」が基本でしたから、褒めて育てる論はいわば「体育会系社会からの脱出」であり、終焉を告げる動きでもありました。

誰だって叱られるより褒められたいし、褒められたほうがやる気も出る。「しごかれるより、やりたいことをやらせて欲しい!」という願いに光を当てたのが「個性」という2文字です。当時は、脳科学というはやりの学問も加勢し、「褒めて育てる!」社会ができあがりました。

しかしながら、「豚もおだてりゃ木に登る」とばかりにあっちでもこっちでも「称賛を賞賛する」社会は諸刃の剣です。

「自己肯定感を高める方法」を巡る誤解

例えば自己肯定感。最近は自己肯定感という言葉が頻繁に使われ、「子どもの自己肯定感を高めるには褒めて育てよ!」といった言説や情報があふれていますが、褒めるだけでは自己肯定感は高まりません。自己肯定感は、「どうやって叱るか?」が重要で、その際、信頼と共感を示すことが必要です。

具体的には、成績が悪かった子どもを頭ごなしに叱ったり、やたらに励ましたりするのではなく、「あなたは頑張ったのにうまくいかなかったね」などと、頑張りを評価(=共感)した上で、本人にうまくいかなかった原因を考えるように仕向ける(=相手への信頼)。

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そうやって自分と向き合い、自分で決める経験を積み重ねさせることで「私と共存する心」が育まれます。自己肯定感は「いいところも悪いところも含め自分を好きになる感覚」です。人は自分自身を受け入れてこそ、自分を信じ、前向きに生きていけるのです。