役職定年導入率は大手企業で48.3%に達したが減少傾向

では、役職定年とはどのような仕組みだろうか。役職定年の始まりは、1980年代といわれている。この時期に55歳定年制が60歳定年制へと移行した企業が多く、その際に55歳前後で代替の仕組みとして導入されたようだ。

一般的な役職定年の定義は、管理職が一定の年齢に達するとラインから外す制度とされている。役職定年の導入比率は、大手企業で48.3%に達している。役職定年は、企業規模が大きくなるほど導入比率が高いが、近年はその実施比率が減少しつつある。中堅・中小企業においては人手不足感があり、大手企業よりもシニアに第一線で働いてほしいというニーズが強いのではないだろうか。そのため、企業規模が大きいほど、人手不足が中堅・中小企業ほど深刻でなくなり、役職定年の実施比率が高くなるのだと考えられる。

また役職定年を廃止する企業がある一方で、これから導入を考えている企業もある。国家公務員では定年年齢の延長をきっかけに、2023年4月から役職定年が導入された。

定年再雇用は、2013年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法がきっかけになっている。ここでは、雇用を希望する者全員の65歳までの雇用確保措置が義務づけられている。定年再雇用の定義は、企業が定年年齢自体は60歳から変更せずに、希望者を再雇用によって継続雇用する制度を意味する。65歳までの雇用確保措置は、定年再雇用だけではない。定年の廃止、延長を行うことも選択肢だ。しかし、そのような選択をする企業は少ない。定年制廃止企業は2.6%、65歳定年の企業は16.1%である。

役職定年や定年再雇用になった人の幸福感はどうか

ここまでで説明してきたとおり、役職定年と定年再雇用は1国2制度型として、シニアの処遇を他の社員と区分する仕組みである。そしてその処遇は低下することになる。一見すると、シニア本人にとって望ましくないような仕組みに思える。では実際のところ、シニアはどう感じているのだろうか。

筆者が同じ大学院に所属する高尾真紀子氏と行った調査結果によると、役職定年者と定年再雇用者の幸福感は、1国2制度型の他の区分の社員と比較して、低くなかったのである。むしろ、非管理職(40歳から59歳)に比べると、役職定年者と定年再雇用者の幸福感は高かったのだ。

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