全体的に見ればシニア男性の働き方は悲観的ではない
さらに、役職定年者と定年再雇用者の仕事への熱意の調査結果も見てみると、幸福感と同様の結果となった。つまり役職定年者と定年再雇用者のワーク・エンゲイジメント(仕事への活動水準の高さを表す心理状態)の得点は、管理職(40歳から59歳)と比較して統計的に差があるとはいえなかった。むしろ非管理職(40歳から54歳)に比べると、役職定年者と定年再雇用者のワーク・エンゲイジメントの得点は、統計的に差があり、高かったのだ。
メディアはシニアの働き方を悲観的に捉えることが多い。役職定年や定年再雇用などをきっかけにモチベーションが低下する、と捉えることもある。そして「シニア男性の働き方を揶揄する呼び方」をすることもある。
しかしこうした悲観的な捉え方は、幸福感と仕事への熱意の調査を見る限り、あてはまっていなかった。むしろシニアの働き方への悲観的な捉え方は、神話の類だったのかもしれない。
これは、幸福感のU字型カーブの観点からすれば、当然の結果とみなすこともできる。48.3歳を底として幸福感は上昇していく。55歳前後から始まる役職定年、60歳から始まる定年再雇用は、上昇カーブに乗り始める段階の年代だ。そうだとすると、役職定年と定年再雇用の幸福感と仕事への熱意が、全体として低くないという結果に違和感はないはずだ。
役職定年でモチベーションが下がったという回答も
そのうえで、やはり年代層を一律に捉える見方は好ましくないだろう。筆者とパーソル総合研究所の共同調査では、役職定年者の意見を自由記述で聞いている。その結果は、「やる気がまったく出ない」「理不尽」「会社へ不信感が残った」「力を持て余す」「メインストリームから外れた」「廃人になる」「夜も眠れない」など否定的なコメントが並ぶ。こうしたコメントをした方々の幸福感と仕事への熱意が低下したことは想像に難くない。実際、37.7%の人が「仕事に対するやる気が低下した」、34.4%の人が「喪失感・寂しさを感じた」と回答している。