激しい反対運動の末開港した静岡空港

島田市と牧之原市にまたがる静岡空港は、静岡県のほぼ中央、広大な茶畑が続く牧之原台地の東端に所在し、2009年6月4日に暫定開港した。

写真=静岡県提供
静岡空港全景。新幹線線路が空港の下を通る。地上に空港ターミナルがある

その翌日の5日、当時静岡文化芸術大学学長だった川勝知事が静岡県知事選への出馬表明をしている。

静岡空港の建設予定地が1987年12月に牧之原台地に決定して以来、東京、大阪を結ぶドル箱路線を持たない空港の大赤字は必至であり、「むだな公共事業の典型」「無用の長物」などの厳しい批判にさらされた。それだけでなく、現在のリニア問題同様に、自然環境破壊を訴える激しい反対運動が起きた。

開港延期を繰り返した後、石川嘉延知事(当時)は2009年3月の空港開港を公約とした。空港建設反対の地権者には土地の強制収用手続きを行い、すべて問題は解決できたと思い込んでいた。ところが、思わぬ落とし穴があった。

静岡県のずさんな測量で、空港周辺3カ所の立ち木約150本が航空機の就航に支障があることが判明したのだ。これにより航空法違反を解消できず、石川知事は3月開港を断念せざるを得なかった。

立ち木所有者は「静岡県は空港建設で嘘とごまかしを重ねてきた。知事はこれまでも他の問題で現場に泥をかぶせてきた。組織のトップとして政治責任を取れ」と強硬な姿勢を崩さなかった。

静岡県内には既に6つの新幹線駅がある

2009年夏の県知事選で5期目を目指していた石川知事は5月18日、立ち木所有者と面会後、県議会に辞表を提出した。所有者は知事との約束を守り、立ち木を伐採。これで何とか6月4日の暫定開港にこぎ着けた。

静岡空港は、年間160万~170万人の利用者数を目標に据えており、その目標のために当初から日本初の「新幹線地下駅」を掲げた。新幹線新駅を静岡空港ターミナル直下に建設して新幹線と結び付けることで、どこにもない利便性の高さを訴えた。

ところが、静岡県内の新幹線駅はすでに6駅(熱海、三島、新富士、静岡、掛川、浜松)もある。JR東海は「これ以上新駅をつくれば新幹線のスピードが出せなくなる」などと新駅設置の構想を真っ向から否定した。