一人で飄々と生き、面白おかしく老いていく

都会でも地方でも、一人暮らしの老人は大勢います。

「寂しいだろうな」
「家族もいないのは可哀そうだな」
「何もかも一人でやるんだから大変だろうな」

ついそんな同情の眼で見てしまいがちですが、本人はどんな気持ちだと思いますか?

たとえば地方の古い家に住むおばあちゃんです。夫に先立たれ、子どもたちは遠く離れた都会で暮らしています。孫を連れておばあちゃんのもとに帰ってくるのは年に一度か二度、お盆と年末年始、くらいなものです。

和田秀樹『心が老いない生き方』(ワニブックスPLUS新書)

寂しくないのか?

寂しくなんかありません。隣近所にも同じ境遇の仲良しがいるからしょっちゅう、顔を合わせてお茶を飲んでいます。自分が高齢になってみると、同じような境遇の同世代にいままで感じなかった親しみが自然に生まれてくるのだそうです。ついの友だちという感覚です。

一人暮らしは可哀そう?

本人は自分を可哀そうとは思っていません。誰にも気兼ねしないで、朝起きて夜寝るまで、自分のペースでゆったりと暮らせるのです。のびのびと、心底くつろいで暮らしている老人がほとんどです。

一人じゃ大変?

一人暮らしはできることをやるだけです。夫あるいは子どものための家事というのは、「なんと世話の焼けたものか」と一人になって気がついたそうです。たまに子どもたちが帰ってきて賑やかになると、「早く一人に戻りたい」と思うそうです。

一人でものんびり朗らかに暮らしている高齢者に共通するのは、自分の老いを面白おかしく受け止めているということです。

「ほんとにもう、すぐに忘れてしまうなあ」
「一日はあっという間に終わってしまうけど、その割にボーッとしている時間がほとんどだな」
「90歳は卒寿か、人生卒業か、なんにも卒業できてないな」

そんな調子でため息つきながらも、日々、飄々と生きている一人暮らし老人が多いのです。

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