「人を健康にしない」メタボ健診の真実

今や「メタボ(リックシンドローム)」という言葉は、不健康の象徴です。

でも、そもそもメタボって、何なのでしょうか。先に答えると、これは肥満の種類です。肥満のうち「a.内臓脂肪が蓄積したもの」に、「b.高血圧・高血糖・脂質代謝異常が組み合わさる」ことで、心筋梗塞こうそくや脳卒中などになりやすい状態のことを指します。

これを解消するために、リスクが高い人を発見し、指導につなげるのが、いわゆるメタボ健診(=特定健康診査)です。メタボ健診が始まったのは2008年4月。内臓脂肪の多さが腹囲の大きさに反映されると考えられ、腹囲「男性85センチ以上」「女性90センチ以上」がメタボの1つ目の条件とされました。

しかし、そもそもボディビルダーのように腹囲が大きくても内臓脂肪が少ない人、その逆で、腹囲が小さくても内臓脂肪が多い人もいます。個人差、同じ人でも日によって、時間帯によっても変動するため、腹囲だけで判定するというのは、当てになりません。

メタボ健診は「人を健康にする効果に乏しい」

そこで、腹囲は必須ひっす項目として、2つ目の条件である「血圧」や「血糖」「血中脂質」など血液検査の項目が設けられました。一方で、「腹囲は基準以下だが、血液検査の値は異常」という人が、メタボ健診をすり抜けてしまうことが、長らく問題とされてきました。

私の“メタボ”騒動では逆に、腹囲を1つ目の条件にしていることで、私のように血液検査に問題ない人を捕まえ、血液検査に異常がある人をスルーする構図に。

このように、まず腹囲でチェックすることで起きるトラブルもあるのです。

しかも、15年ほど続くメタボ健診は、近年の研究で、「人を健康にする効果に乏しかった」という衝撃的な指摘がなされています。

これは京都大学の福間真悟ふくましんごさんらが2020年に発表した研究(※2)で明らかになったこと。この研究は国内では大規模なもので、メタボ健診を受けた40~74歳の男性約7万5000人が参加しました。

参加者の体重と腹囲は1年後、それぞれマイナス0.29キロ、マイナス0.34センチとわずかに減少したものの、血圧、血糖値、血中脂質などは改善されませんでした。さらに1~4年間、追跡をすると、体重と腹囲は3~4年後に差がなくなる、つまり、メタボ健診をやってもやらなくても変わらなかったことが明らかになったのです。