広島発の「二つの声明」に書かれていたこと

ウクライナをめぐる諸問題は、G7サミットにおいて主要な議題であった。会議初日の5月19日に早速討議され、「ウクライナに関するG7首脳声明」が発出された。さらに5月20日には、会議全体の成果として「G7広島首脳コミュニケ」が発出され、ウクライナをめぐる諸問題は、その中でも特筆された。これらの文書で強調されたのは、「包括的で、公正かつ永続的な平和(a comprehensive, just and lasting peace)」という概念だ。これこそがG7のウクライナ支援における政策的な目標といってよいだろう。

「包括的」というのは、軍事的な面だけでなく、社会経済活動の復旧なども含めた総合的な視点で、ウクライナの平和を考えていきたい、ということである。仮に軍事的問題が解決されても、その後ウクライナの人々の社会経済生活が成り立っていかないのであれば、それは平和な状態だとは言えない。その中で、例えば軍事面で貢献できることは限られている日本も、社会経済面での復興支援では積極的に役割を果たしていく、ということだ。

「侵略行為としての戦争は違法とする」という規範

より深く考えてみたいのは、「公正」かつ「永続的」な平和、という表現についてだ。この言葉でG7は、いったい何を言おうとしているのか。

第1回の論考「『兵器支援より和平交渉を優先すべきでは』なぜ地元テレビ局はゼレンスキー大統領にそんな質問をしたのか」でも示したように、「公正/just」な平和とは、「法の支配に基づく国際秩序の堅持」の決意に沿った平和、より具体的には「国連憲章の諸原則」に沿った平和を求めるということである。

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ウクライナ情勢に即して言えば「ロシアによる侵略という国際法違反を見逃したまま平和を目指すことはしない」、あるいは「そのような平和は真の平和とは言えない」という認識が、その根底にある。冒頭で述べたようなG7への批判的な声を、強く意識した表現であると言えるだろう。

国連憲章の諸原則によって表現される国際社会の「法の支配」の根幹には、「侵略行為としての戦争は違法とする」という規範がある。これは第1次世界大戦後の1919年に作られた国際連盟規約で導入され、1928年にパリで締結された不戦条約によって法規範として強化され、1945年の国連憲章でさらに発展して今日に至る一大原則だ。

ロシアはこの原則に明白に違反しているため、その違反を容認するような形での平和は認められない、というのがG7の立場である。