若手繁盛塾の言い出しっぺは岩渕である。新潟出身の岩渕には、新潟をなんとかして盛り上げたいという思いが強い。しかし、新潟には全国区の観光名所がなく、全国区なのは田中角栄と米と日本酒ぐらいだ。岩渕が言う。

「新潟を盛り上げるには町おこしの前に人おこしだろうと。では、人おこしって何って言ったとき、私は飲食の世界にいるわけですから、飲食業の経営者の方々が生き生きするのが一番だろうと。飲食に活気があれば、新潟の交流人口を増やせるのではないかと考えたのです」

この若手繁盛塾で坂井と岩渕は意気投合するわけだが、それにしても「風味爽快ニシテ」発売のインパクトは大きかった。発売からわずか一カ月余りで獲得件数(切り替え)の年間計画をクリアしてしまったというから、まさに破竹の勢いだ。仕掛け人は、新潟統括支社長の三浦良祐である。

「他社を刺激しちゃいけませんが(笑)、反応はいいですね。新潟はサッポロビールの生みの親である中川清兵衛と、育ての親である大倉喜八郎の故郷であり、サッポロとは非常に縁が深い土地です。『風味爽快ニシテ』という名前は北海道開拓使麦酒醸造所の初代主任技術師である中川清兵衛が初めてつくった『冷製札幌ビール』の効能書の中の『風味爽快ニシテ健胃ノ効アリ』という一節から取りました」

新潟には「新潟サッポロ会」というサッポロビールファンの財界人や名士の集まりもあり、歴史的にもサッポロと縁が深い。その縁を商品化してみせたのが「風味爽快ニシテ」だと言っても過言ではないだろう。三浦が言う。

「われわれが持っていた見えざる資産の発掘です。それを、他社にはないサッポロの武器として生かし切ろうということです」