「とりあえずビール!」──居酒屋に入ってまず一言。我々はその店で扱うビールの銘柄を自然と選ぶことになる。飲食店は巨大な試飲の場だ。それだけにテーブルにビールが運ばれてくるまでには、営業マンの熾烈なバトルがある。
人事を尽くして天候を待つ
JR新潟駅前の弁天は、古町と並ぶ新潟を代表する繁華街である。
新潟駅周辺で7店舗の居酒屋を経営する頭屋の坂井環社長は、いま弁天に8店舗目を建設中だ。その現場に、サッポロビールの営業マンが目の覚めるようなブルーの看板を運んできた。
営業マンの名前は岩渕和宏。坂井が思わず声を上げる。
「うちは、店の外側に色のシェアを持ってるからさ。この青い看板をガンガン立てて表通りも裏通りも真っ青にしたら、やった甲斐はめちゃめちゃあるよね」
青い看板には、
「風味爽快ニシテ」
という文字が躍る。サッポロが12年5月に発表した新潟限定販売のビールである。坂井が言う。
「新潟限定の樽詰めで、業販向けのみっていうのがいいよね。東京に帰ってコンビニで買おうと思っても売ってない。これは、新潟の飲食店にとっては相当なキラー商品ですよ。普通、メーカーさんはこういうことしてくれませんよね」
かく言う坂井も、4店舗目まではサッポロではなく他社のビールを入れており、現在でも他社のビールを複数の店舗に入れ続けている。サッポロを扱うようになったのは、新潟にかけるサッポロ営業マンたちの深い思いに打たれたからだ。
「サッポロさんは飲食店の経営者を集めた若手繁盛塾というのをやってくれていまして、関西や関東で成功している居酒屋のオーナーを招いてセミナーをやってくれたり、かっこいいお皿を焼いている窯元さんを紹介してくれたりして、ぶっちゃけ、売り上げアップにすごく貢献してくれているんです」