「Rakuten最強プラン」が起死回生の一打になるか
ネット上では、楽天は携帯事業から撤退するのではないかとか、他のキャリアと統合するのではないかと言った見方も出ている。だが、万が一、そんなことになれば、菅首相の介入が新規参入を疎外し、競争を排除したことになってしまう。結局、既得権を持つ3社が有利になるということだろう。それを菅首相が意図していたとは思わないが、政府が価格をコントロールしようとして介入すれば、市場競争は大きく歪むことになるのは現実だろう。
楽天自身は、今回の公募増資の発表資料の中で、Eコマースやトラベル、金融決済などの同社のサービスを展開していく中で、「モバイル端末が最も重要なユーザーとのタッチポイントであることに疑いの余地はなく」重要だとし、携帯事業を死守し続けていく覚悟を示している。三木谷浩史会長兼社長が描く、全体の事業構造に携帯事業は不可欠だということだろう。
つながりにくいと批判される楽天モバイルの通信環境を改善する切り札としてauを運用するKDDIとの間で、自社でカバーできていないエリアでの「ローミング」契約を新たに締結した。また、6月1日から「Rakuten最強プラン」と銘打って、データ高速無制限で最大2980円という新プランを投入する。これが起死回生の一打になるかどうかが楽天にとっての正念場だろう。
「官製値下げ」は国民の利益に繋がるのか
政治家の介入による「官製値下げ」は国民受けが良いこともあって、繰り返されがちだ。6月からの電気料金の値上げに対しても河野太郎大臣と消費者庁が苦言を呈したことで、値上げ幅が圧縮された。電力料金も新規参入を促し競争状態を作ることで価格引き下げを進めていたはずが、いつの間にか「官製価格」の時代に舞い戻っている。一見、消費者のために動いているように見えて、結局は政府が競争をコントロールするようになり、市場は歪み、新規参入が阻害されることになる。
競争のルールが突然変わったことで悪戦苦闘を余儀なくされた楽天を見ていると、似たようなことが繰り返されかねない予感を覚える。岸田文雄内閣はガソリン価格の上昇を抑えるために巨額の補助金を出し、小麦粉の価格を引き下げ、電気やガスの価格もコントロールしようとしているからだ。果たして、それが長期的に見て国民の利益に繋がるのかどうか改めて考えてみる必要がありそうだ。