みっともないきょうだい

11月26日。母親は自宅で2人の看護師の訪問中に死亡。83歳だった。

「昼の11時ごろ、清拭を終えて身を整えていただき、冗談を言いながら笑い合っている中、旅立ちました。もし、夜中に私が独りで介護をしている時に母が死んでいたら、ひどく動揺して慌てたと思うので、良かったと思いました」

母親の葬儀は、大木さんが喪主を務めることに。大木さんは最後まで、兄を葬儀に呼ぶことをためらった。いとこに相談して、いとこから兄に連絡を取ってもらった。その後、兄から連絡はなく、葬儀に来るかどうかもわからなかったため、再度いとこから連絡してもらうと、兄から電話が入る。

案の定、兄は喪主を妹が務めることや母親の葬儀に対して不満を吐き出し続けたが、大木さんは何を言われても、葬儀を滞りなく終えるために聞き流していた。

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大木さんの兄は、参列者が席に付き、僧侶待ちで静まりかえった会場で、突然大木さんに声をかけた。

「家にある金貨やカメラなどの貴重品がなくなっているんだけど、お前が盗っただろう?」

大木さんはがくぜんとした。ゴミ屋敷状態になっていた実家には、母親の最初の大腿骨骨折以来、数年間入っていなかった。全く身に覚えがないため、「家に入っていないし、知らない」と言っても、「鍵を持っているのはお前しかいない」と兄は食い下がる。

「『なぜ、このタイミングなの?』と、心からあきれました。本当に親不孝すぎて、恥も外聞もないと思いました」

大木さんが何度か否定すると、「泥棒が入っているのかなぁ? 鍵を変えるか……」と兄は独り言のように言い、ようやく黙った。

父親の死後、自分のマンションのローンを父親の保険金で支払ってもらっていた大木さんは、母親の財産を全部、兄にあげてもいいと思っていた。

「母の介護が終わり、私はもう、仕事に集中したいと考えていたので、相続で兄に振り回されるのが面倒くさいと思っていたのです。しかし葬儀後、兄からぶしつけに、『香典を半分くれ』と言われ、心底腹が立ちました。兄は自分の友人や会社の人からの香典は辞退したので、ほとんどが私の友人からの香典ですが、葬儀費用や香典返しでほとんど残りません。はっきり言って嫌がらせですよね」