アメリカの別の配達員男性も昨年、「顧客がし得る最悪のこと」としてTikTokに動画を上げた。チップ額は顧客の管理下にあるため、チップ・ベイディングへの対策はほぼ不可能だと嘆く。動画は480万再生の注目を集めた。

ある配達員はCBCに対し、チップ・ベイティングを20件に1件ほどの割合で食らうことがあると述べている。

ギグワーカーという働き方には利点もあるが…

もっとも、悪い面ばかりではない。役者志望のある男性は、ニューヨーク・タイムズ紙に対し、好きな時間にオーディションを受けられる柔軟な働き方が気に入っていると述べている。

単発の仕事を請け負うギグワークは、いまやめずらしい働き方ではなくなった。CBCは、カナダ統計局がパンデミック以前に発表したデータを引き、カナダ人労働者のおよそ10人に1人をギグワーカーが占めていると報じている。

写真=iStock.com/MOZCO Mateusz Szymanski
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だが、チップに依存し労働をギャンブル化する制度設計については、疑問の声も聞こえる。そもそもUber Eatsが徴収する配達料から適正な報酬が配達員に分配されていれば、配達員たちはチップに依存せずとも安心して業務をこなすことができたはずだ。

ギグワーカーズ・ユニオンの代表であるジェニファー・スコット氏は、CBCに対し、Uber Eatsなどのフードデリバリーの報酬システムを批判している。

「チップは私たちの収入に欠かせない要素ですが、それは各アプリが利益を増やす目的の下、可能な限り私たちの賃金を下げようと活発に取り組んでいるからです」

チップ文化のない日本の配達員たちも追い込まれている

日本でもUber Eatsの配達員の報酬は高いとはいえない。2021年以降、報酬の計算式の非公開化や、ピーク料金加算の廃止などが発表され、配達員を取り巻く環境は一段と厳しくなった。

正規の報酬はアメリカと同程度であり、さらに日本ではチップの習慣が定着していない。日本のアプリでも任意でチップを支払えるしくみは導入されているが、あくまでユーザーの厚意まかせになっている。配達員のおかれた状況はアメリカよりも深刻と言えるだろう。

アメリカやカナダでギグワークの厳しさが問題となるなか、こうした北米の習慣と報酬体系をそのまま日本に持ち込んだ結果、日本のギグワーカーはより厳しい現状にさらされているといえそうだ。

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