米フード宅配アプリのGrubhubは具体的に20%のチップを推奨しており、10~15%が相場だという意見もある。しかし、アメリカの人々からは、必ずしもこれに同意しない声も聞こえる。だが、より低い額を支払う顧客も多い。

FOXニュースによると、バイラルになった動画である配達員は、40分を走ってわずかなチップしか受け取れなかったため、食べ物を届けずにそのまま持ち帰ったと語っている。

ユーザーはチップの重要性を認識しているが…

もっとも、一般的には利用者側もチップの重要性を理解しており、一部ユーザーは積極的に高額のチップを弾んでいるようだ。カナダ公共放送局のCBCは、チップの提示により、迅速な受け取りが期待できると説明している。

同局は、実際の配達員たちの話を基に、各種フード宅配サービスではチップが「運賃の大きな割合を占めている」と述べている。このため多くの配達員たちは、配達案件に表示されるチップの額とにらめっこし、「あなたの注文に足を運ぶ価値があるかどうか、評価を下している」のだという。

フードデリバリーをよく利用しているというカナダ南部・カルガリーに住む男性は、CBSに対し、チップの支払額は優先的に配達担当者を確保するための「入札」のようなものだと述べている。

この男性は「10カナダドルだろうと20カナダドルだろうと(約1000円から2000円)、誰かが私のために最速で取ってきてくれるのであれば、間違いなくその価値はあります」と語る。

高額チップで配達員を騙す「チップ・ベイティング」が横行

ところがこのチップが、配達員たちを翻弄する新たな要因になっている。「チップ・ベイティング(チップ釣り)」と呼ばれる悪質な手口が一部で横行している。配達前に高額のチップをちらつかせて素早くフードを配達させるが、完了後に実際の支払い額を大幅に引き下げる手法だ。

米ニューヨーク・ポスト紙は、ある配達員がTikTokで苦境を訴え、バイラルになった動画を取り上げている。子育てをしながら隙間時間に配達をこなし、家計の助けにしているというこの女性は、自宅から車で5分の距離にチップ15ドル(約2000円)をうたう配達案件を見つけ、喜んでフードを届けたという。

指示にあったとおり、ケチャップやペーパーナプキンなどを「大量に」付け、「熱々のうちに」配達を完了させたと女性は語る。ところが仕事が完了し、アプリを確認した女性は、愕然としたようだ。「稼ぎはいくらだったと思う? 2ドル(約270円)ですよ」と女性は憤る。期待したチップの87%が支払われなかった計算だ。

アプリの不具合ではなかった

アプリの不具合かとも思い配達仲間に相談したところ、「うん、まあそういうことはあるよね」という反応だったという。女性は「あまり知られていないがよく起きている手口」だと述べ、「こんなことはしないで」と動画で訴えている。