店舗スタッフがインフルエンサー化する

こうして生まれた店舗スタッフへの共感をベースにして、次に起こる重要なポイントが、「②指名購入」だ。

店舗スタッフのタイプやコーディネートなどを気に入ったら、お客さまは次も同じ店舗スタッフの投稿を見てくれるようになる。EC上でも店舗スタッフ個人にお客さまが付く状態だ。

インスタグラムから自社ECに飛んでくることもあるし、逆に自社ECのスタッフページに掲載したインスタグラムのアカウントをフォローしてもらうケースもある。単なるファッションの着こなしだけではなく、SNSからそのスタッフの人柄やライフスタイルを知ることで、よりファンになってもらえる。そして、お客さまは「この人から買いたい」と、指名買いをすることになるわけだ。

実際、スタッフスタートを利用する店舗スタッフの3人に1人が指名購入するお客さまを持っている。こうしてファンが付き、スタッフがインフルエンサー化し、発信した情報に対してアクションを起こしてくれるファンが増えていくことになる。

最高記録は「1投稿=8100万円」

そうしてオンライン上でも強固なファンのベースを築くと、お客さまはSNSにコメントをくれたり、ECで購入したりするだけではなく、店舗スタッフに会いに来てくれるようになる。「③指名来店」だ。

小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)

すでに多くの店舗スタッフは、インスタグラムで出勤簿を提示したり、ヘルプで行く店舗を告知したりと、ファンが来店しやすいよう工夫している。実際、人気の店舗スタッフがヘルプに入った店舗で1日の最高売り上げを更新した例もある。

つまり、オンライン上でつくったファンとのつながりは、必ずリアル店舗にも還元されるのだ。

特にwithコロナの時代には、ウインドーショッピングをしたり、何店舗もふらりと入って商品を探したりするよりも、事前に行く店を決めて訪問することが多くなっている。指名来店はリアル店舗への集客という意味でも、ファン化という意味でも、より重要さを増している。こうして店舗スタッフのインフルエンサー化を進めることが、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)を成功させる近道となる。

実際、ここまで説明してきた3つのサイクルのインパクトは絶大だ。

図版=小野里寧晃『リアル店舗を救うのは誰か』(日経BP)より

すでにスタッフスタート経由のEC売り上げで1スタッフの最高記録は月間1億3000万円に達している。これは店頭の約100倍もの実績だ。ここまでいかなくても、月間500万円以上のスタッフは731人、月間1000万円以上は235人もいる。店頭に立つだけでは絶対に達成できない売り上げを多くのスタッフがたたき出している。ちなみに、1回のコーディネート投稿経由のEC売り上げは約8100万円が最高記録となっている。

関連記事
映画も音楽もネットで完結する時代なのに…レンタルショップのゲオが潰れるどころか急成長しているワケ
なぜファミレスで「配膳ロボ」が急増しているのか…人手不足だけではない「ネコ型ロボット」の導入背景
ガラガラのベトナム料理店は1カ月で激変した…「7秒の動画」がTikTokで幸せな炎上を引き起こしたワケ
トップバリュのユニクロ化が始まった…「安さ」が売りだったイオンのPB商品に起きている大異変
「私は聞いていない」という上司はムダな存在…トヨタ社内に貼ってある「仕事の7つのムダ」のすさまじさ