「ハンドバッグに何が入っているか」国民の長年の関心事
「女王スタイル」に欠かせないものがある。それは、左腕に通したハンドバッグだ。女王は、「このバッグを持たないと、きちんと服を着ている気持ちにならない」とまで言い切っている。バッグは英国ブランド、ロウナー(Launer)で、女王はアトリエを訪れ製作過程を見学、職人の優れた技に魅了された。
一つの価格が30万円以上と言われるが、傷めば修理に出すなど大切に扱い、文字通り片時も離さなかった。亡くなる2日前にスコットランドのバルモラル城でトラス首相(当時)を任命したときも、左腕に黒色のロウナーを持っていた。
ハンドバッグの中には、いったい何が入っているのだろうというのが国民の長年の疑問だった。よほど大事なものが収めてあるに違いない。2022年6月プラチナジュビリーでは、クマのパディントンとお茶会をした寸劇が大きな話題になった。
この中で女王はハンドバッグから、マーマレード・サンドイッチを取り出した。パディントンと同じように「私も持っていますよ」と見せたのだ。国民の間に、バッグの中身に関心があると承知してのユーモア劇だった。
床に置いたら「今すぐここから立ち去りたい」の合図
実際は、口紅、手鏡、イニシャルが刺繍されたハンカチーフ、眼鏡、ミントキャンデー、チョコレート、クロスワードパズル帳などが入れてある。日曜日に教会に礼拝に行くときは、きちんと折りたたんだ紙幣も忘れない。
また、側近に合図を送るときにハンドバッグを使用する。バッグを床に置いたときはすぐにこの場から立ち去りたい。バッグを持ち替えたときは、3分以内にこの場から出られるようにしてほしい、などだ。
VIPなどと向かい合っているときは、自分の希望は口に出して伝えにくい。側近がバッグの合図を認めると、「女王陛下、○○様より緊急のお電話が入っております」などと伝えて、その場から引っ張り出してくれる。愛用のバッグはこうした役目も担っていた。