「野球には興味がなくても楽しいから行く」でいい

「野球には興味がなくても楽しいから行くといった、球場を訪れる心理的なハードルを下げるような形で、多様な層を取り込みたいと思っています。

ですから、エスコンフィールドでは、多様な観戦環境をつくるというテーマを追い続けてきた一方で、野球に関係なくてもホテルに泊まりたいとか、温泉に入りたいとか、クラフトビールが好きだから来るとか、いろいろなコンテンツを散りばめながら、球場の中も外も、野球に興味ない人でも何かをフックに来てみたいなと思われる施設にしたいということなんです」

初めて自前の球場をつくるファイターズが、日本初の観戦スタイルをいくつも盛り込んだ球場をつくる。初めてずくめの球場プロジェクトに、乃村工藝社は、最初はスタジアム周辺のコンサルティング業務から関わったという。同社の平野裕二さんが振り返る。

「プロジェクトのうわさを聞いて、チームの何人かでファイターズさんを訪問しました。日本初のボールパーク計画ということで、当時、全国でスタジアムアリーナをどんどん開発していく流れがあったんですけれども、そのなかでも抜きん出た開発だなと感じていて、もうこれはやりたいという想いで、ぜひ関わらせてくださいとお願いをしました。それで、球場周辺のマスタープランサポートの取り組み提案からさせていただきました」

撮影=永禮賢
乃村工藝社の平野裕二さん(ビジネスプロデュース本部 第二統括部 都市複合プロジェクト開発部 専任部長)

「この仕事は誰にも譲りたくなかった」

球場周辺のアクティビティ検討、配置検討などを続けるうちに、エスコンフィールドは基本的な計画がまとまり、球場内の施設について、設計施工コンペが行われる。乃村工藝社の田村啓宇さんは、どうしてもこのコンペに参加したかったという。

「僕の人生で、二度と出会えるかどうかというぐらい大切な機会だなと思いました。正直なところ、この仕事は誰にも譲りたくなかったんです。チームのみんなも同じ想いでした。野球場というのは、デザインの世界でそういう分野があるわけじゃなくて、今回も商業施設でもあり、エンターテイメント施設でもあり、ある種企業ミュージアム的な要素もある。

もう、さまざまな要素が入り交じっているので、ぴったりフィットする人材ってそんなにいないんです。だから人選が難しい。しかも、金額が大きいのでビジネス的なリスクもある。案件の内容とともに想いを会社に説明して、最終的には会社が現場の熱意をくんでくれて、コンペに参加することができました」

撮影=永禮賢
乃村工藝社の田村啓宇さん(クリエイティブ本部 第二デザインセンター センター長 統括クリエイティブディレクター)