なぜ本拠地・札幌ドームを離れたのか

Fビレッジが計画されたのは2015年のこと。自前の球場を持つことが念願だったと、Fビレッジの運営会社であるファイターズ スポーツ&エンターテイメント(以下、ファイターズ)の小川太郎さんは語る。

「社内プロジェクトがスタートしたのは2015年からですけれど、自前の球場については、そのずっと前から課題としてありました。球団経営を考えていくと、球団・球場一体経営という形で、自分たちでハードも持ってコントロールしていかなきゃ成長できないよね、ということがひとつ。

もうひとつは、企業理念として“スポーツコミュニティの実現”をずっと掲げていて、野球はもちろん、野球から離れたところでも地域コミュニティにどういう形で貢献できるのかを考えると、球場があるエリアの街づくりというとおこがましいですけれども、少しでもエリアとか地域に貢献し、発展に寄与していきたい。それが、球場と周辺を段階的に開発するという今回の構想につながりました」

その構想を具体化するにあたって、まず、目指していく街のビジョンを定めたと、同じくファイターズの酒井恭佑さんはいう。

撮影=永禮賢
ファイターズ スポーツ&エンターテイメントの酒井恭佑さん(ボールパーククリエーショングループ兼企画PR部ディレクター)

野球ファンだけを対象にしても先細りしてしまう

「Fビレッジのビジョンとして、“PLAY HUMAN”を掲げました。これは人が人らしく人生を謳歌おうかするために、人生を楽しもうというメッセージを込めています。今、世界の情勢がすごく不安定ですし、コロナ禍もあって、思い切り声を出して応援することもできません。だからこそ、生きることを楽しむ、喜ぶことが必要じゃないかなと思っています。

私たちの事業である野球興行は、エンターテイメントで人を幸せにしたり、明日の生きる活力を生み出したりするものです。ですから、Fビレッジという街のビジョンにもそういう目標を掲げました」

Fビレッジには、野球に興味がない人にもぜひ来て楽しんでほしいと小川さんはいう。

「Fビレッジを構想するのに、ひとつ大事にしたことがあります。野球ファンやファイターズのコアなファンの人たちに向けて、リアルで観戦することの価値を最大限に高めることは、当然追求していきます。でも、業界全体でいうと、日本全体が高齢化して、人口が減っていくフェーズに突入していくなかで、野球ファンだけを対象にした施設では、やはり先細りしてしまいます」

撮影=永禮賢
ダグアウトクラブラウンジの壁画。2016年のファイターズ優勝のオマージュとして描かれた