子どもを思う親心は税務署には通じない
あるお金持ちの家では、「家族で海外旅行に行こう」との話になったときに、お子さんがとても心配したそうです。自分の家にはお金がないと思い込んでいたので、父親がどうやって旅行代金を支払うのか心配になったのでしょう。
これは極端なケースですが、そこまでしても子どもには親の財産を当てにしてほしくないと考えているのです。
相続税の税務調査で名義預金を指摘されることが少なくありません。名義預金とは、名義は子どもになっているものの親の財産としてみなされる相続税の対象とされてしまう預金です。
親が子ども名義の口座に入金しただけで、口座を子ども自身が管理していないケースはよくあります。相続が発生すると、その預金は名義預金として親の財産であると見なされる可能性が高くなります。親にしてみれば、相続税対策として生前贈与をしたいのだけれど、子どもに知られてしまうと健全な金銭感覚が身に付かないので秘密にしているのでしょうが、そんな親心は税法上、認められない可能性が高いのです。
お金には魔力があります。使い方を間違えると人生を誤ってしまう可能性があります。自分の子どもがお金に対してどんな考え方をしているか、それを見極めるまで、子どもにお金の話はしたくないのです。
子どもの金銭教育は古代バビロンの黄金時代から親の悩み
子どもの金銭教育は、いつの時代も親にとって大きな課題でした。それをうかがい知ることができるのが『バビロンの大富豪』(ジョージ・S・クレイソン著)に綴られている「黄金則」です。同書で描かれている富を築くための行動や考え方は、とてもシンプルなものです。
大富豪のアルカドは息子ノマシアに財産を継いでほしいと考えていましたが、単純に相続させるだけでは息子のためにならないと考えました。
そこで「財産を上手に使う能力があることを証明してほしい」とノマシアに伝え、旅をさせます。そのときアルカドは息子に「金貨の詰まった袋」と「富を生む黄金5原則」を授けました。
ノマシアは旅をするうち、詐欺師などにだまされて金貨を失ってしまいます。そのときに父親から「富を生む黄金5原則」を与えられたことを思い出し、一つひとつ実行してきました。そして莫大な資産を築いて父親の元に返ったのです。
<富を生む黄金5原則>
1 黄金は「堅実な者」を好む
資産を築くため、少なくとも収入の1割を貯めようとする者のもとに、黄金は進んで集まり増えていく。
2 黄金は「賢明な者」を好む
もっと儲かる仕事を黄金にあてがってやると、黄金は獣の群れのように繁殖していく。
3 黄金は「慎重な者」を好む
黄金の扱いに長けた人間の助言に従う、注意深い持ち主から黄金は離れようとしない。
4 黄金は「軽率な者」を嫌う
持ち主がよく知らない、事業や商売、あるいは蓄財に長けた者がよしとしない商売からは、黄金は逃げてしまう。
5 黄金は「強欲な者」を嫌う
無理を強いる、ありえないような儲け話に乗る者からは、黄金は逃げてしまう。