座席表がないなら、前からいる人が自己紹介をすればいい
――働き方がガラリと変わるわけですから、当然、反発もありますよね。
【村井】ありました、ありました。でも、以前も言ったように「全員反対」の時が、変わるチャンスでもあるんです。
座席表がなくなっちゃうわけですから、例えば新入社員や新しくJリーグに移ってきた人なんかは、紙の座席表を見て一緒に働く仲間や上司の顔と名前を覚えるという作業もできないわけです。仕事自体もまだ紙が中心の部署もあって「資料の置き場がなくなったら仕事にならない」と猛烈に怒った社員もいました。
しかし例えば座席表の件で言うと、前からいる人たちが新しく入ってきた人のところへ行って「私、○○部の○○です。こんな仕事を担当しているので何かあったら声をかけてください」と自己紹介する、みたいな新しい形のコミュニケーションも生まれました。
紙の資料を溜め込んでいた社員も、必要なものはデジタル化する、不必要なものは捨てる、というような作業をするといった工夫を重ね、身辺がずいぶんスッキリしました。無駄なものを削るという作業は資料を減らすだけでなく、仕事の効率化にもつながり、いつも終電間際で帰っていた人が、余裕を持って帰宅できるようになるみたいな副次効果もありました。
組織中心からテーマ中心に働き方が変わった
――6つの事業会社が一つになり、慣れ親しんだ自分の席もなくなって、現場に混乱は起きなかったのですか。
【村井】混乱より発見のほうが多かった気がします。私も席がなくなって、オフィスにいるときは空いている席を見つけて座るのですが、そうすると隣の社員が電話でクレーム対応している様子が手に取るようにわかる。「ああ、今現場ではこんな問題が起きているのか」というのを、じかに感じられるようになりました。これは役員室にこもっていたら絶対に触れられない情報ですね。
逆に私がJリーグのパートナーさんや実行委員と話しているのを聞いて「今の話、大変そうですね」「それってこんな対応もありじゃないですかね」と社員が話しかけてくれるようになりました。そこからテーマに合わせて新しいプロジェクトが動き出すような風土が生まれていきました。
メディアプロモーションの社員がなぜか物販やチケットセールスに協力していたりして、「彼の上司は誰?」というくらい、組織中心から仕事中心、テーマ中心の働き方に変わりました。