それぞれの心の中にあるバリアを取り払うこと
――部屋をなくす、組織をなくすだけで、働き方というのはそんなに変わるものなのですね。
【村井】一番のポイントは社員それぞれの心の中にあるバリアなんです。「私はこの組織に所属しているのだから、その壁を越えた話をしてはいけないのではないか」とか「自分は役職のない社員なのでチェアマンに直接会いに行ってはいけないのではないだろうか」とか「Jリーグで働いている自分が他の競技団体の人と仕事をしていいのだろうか」とか。
これらはすべて心の中にあるバリアの問題ですね。これを取り払っていけば、いろんな人との出会いが生まれ、そこから新しいアイデアが生まれて、新しいサービスができていきます。
たかがフリーアドレス。言ってみれば「席替え」の問題ですが、窮屈な靴に自分の足を合わせるよりも、自分に合う靴を選ぶという、生き方の問題でもあるわけです。
もちろんわれわれは組織で動いているので、目的地がありますしタイムリミットもあります。全部が自由というわけではありません。ただそれらを実現するための方法は、心のバリアを取り払って、自分に合う靴を選んでいけば良いと思います。
「オフィスに通える人」という条件も外すことができる
その後、Jリーグもコロナ禍でリモートワークを強いられることになるのですが、一足早くフリーアドレス制をやっていたので、リモートワークには比較的スムーズに移行できました。
コロナ禍で入社した人たちはリアルで顔を合わせることがないまま、いろんな人たちと仕事をしてきました。JFAビルのオフィスも半分は引き払ってしまったので、200人の従業員全員が一堂に会せる場所はないのですが、チームごと、部署ごとに仲間同士でご飯を食べたりする機会を増やしてもらえればと考えています。
一方、リモートワークでここまでやれるのなら「湯島にある今のオフィスに通える人」という条件を外して、人材を採用することも可能なわけです。世界中からJリーグで働ける人を集めていくような人事の考え方に移行していく予感もあります。