「いつでもどこでも自由にやりなさい」は案外むずかしい

さらに、決まった時間、決まった場所、そして仲間。この3つをそろえることができたら、新しい何かを成し遂げるための大きな加速がつきます。

ある時期、子どもたちと一緒にラジオ体操に行っていたときがありました。近所の公園で、朝の6時半からお年寄りのグループがラジオ体操をやっていて、そこに一緒に加わらせてもらっていたのです。

夏の間は、おにぎりやくだものなど簡単な朝食を用意して行き、ラジオ体操が終わったあとにそのまま公園で食べてくることもありました。

からだはスッキリするし、朝の澄んだ空気のなか、木々の緑や花を眺めながら食べる朝食はとてもおいしく、子どもたちも喜んで参加していたのでラジオ体操の習慣は気に入っていました。

ところがあるとき、夫から疑問の声が上がったのです。夫は出勤のために毎朝6時半には家を出ます。夫は慌ただしく出かけていきますが、私はそれ以上に4人の子どもたち(アメリカ留学中に四女が誕生しました)の着替えや朝食の準備などで大わらわ。

ただでさえ朝は忙しいのに、ラジオ体操の時間に間に合わせるために一層「バタバタ」していました。夫はあまりの私のバタバタぶりを見かねたのでしょう。

「どうしてそこまでしてラジオ体操に行くの? どうしても行かなければいけないものなの?」と。

そんなに忙しい思いをしてわざわざ公園まで行かなくても、体操をやるだけなら、ラジオやYouTubeを使って家でやればいいのでは、というのが夫の言い分でした。

夫にいわれてみると、たしかにラジオ体操に行く日の朝の、私の「バタバタっぷり」はすごいものがありました。

結局、ラジオ体操に行かなければその時間でできることが意外に多くあるとわかり、子どもたちが仕事に出かける夫を見送ることもできるので、ラジオ体操に行くのはやめてしまいました。

すると、朝にからだを動かすのはなんて気持ちいいのだろうと思っていたにもかかわらず、家では一切ラジオ体操をやらなくなってしまいました。このとき改めて思いました。何かを続けるには、「時間」「場所」「仲間」が必要なのだな、と。

あのとき、数カ月間でもラジオ体操を続けられたのは、午前6時半スタートという決まりがあり、公園という決まった集合場所があり、たくさんのおじいちゃんやおばあちゃんという仲間に会えたからでした。

時間や場所の制限はなし、いつでもどこでも自分の自由な時間にできる、というのは一見なんでも可能になる気がしますが、実際はむずかしい。

「この時間しかない」「ここだけ」「これを逃すとチャンスはない」という条件は、自分を縛る制約のような顔をしていますが、その実、集中力をアップさせ、加速度的に成果を上げる大きなアドバンテージになるのです。

「今だけ」「ここだけ」の制約こそ、集中のカギ

これは勉強でも同じだと思います。

たとえば私の場合なら、高校生のときなどは、好きなときに聴くだけでリスニング力がアップするという英語のCDや、好きなときに学習して添削してもらう問題集など、時間や場所の制限のない勉強法に何度もチャレンジし、挫折してきました。

でも、子育てしながら仕事をするようになってからは、「耳が空いている時間」が通勤時間など、ごく限られたものになったので、「ここで聴くしかない」と思いながらiPodで英語のCDを聴くと、かなり効果が上がりました。

吉田穂波『「時間がない」から、なんでもできる!』(サンマーク出版)

勉強を続けるためには、決まった「時間」と「場所」、そして「仲間」の3つがそろうと最強です。

アメリカ留学を終えて日本に戻ってきてからはコーチングの勉強を始めましたが、このコーチングのレッスンは、週に1、2回、1時間、複数の受講生が電話会議のようなシステムでクラスに参加するというスタイルです。

「仕事をしながら幼い子どもたちを育てて、そのうえよくコーチングの勉強ができますね」といわれますが、独学ではなかなか進まなかったでしょう。

これも決まった「時間」「場所」、そして共に学ぶ「仲間」がいるからこそ続いていた、といえるのです。

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