社外取締役は日本に無用の制度

子会社上場は、親会社のリスクを抑えながらリスク投資をする貴重な手段である。そこから大きく育った企業も多い。トヨタ自動車は豊田自動織機の上場子会社であった。積水ハウスは積水化学の、富士フイルムはダイセル化学の、富士通は富士電機の上場子会社であったが、これらのすべての子会社は親を超える規模にまで成長している。

公開会社法でのもう一つの不安は、内部統制強化の一環として社外取締役の選任が義務付けられる可能性があることである。社外取締役は、日本の雇用制度、内部牽制制度を考えれば、無用な制度であり、かりに導入されたとしても、あまり影響はない。日本の現実を理解しようとしない海外の投資家の要望に応えるのは合理的ではない。仮に法律によって義務化が図られたとしても、このような制度の必要な不埒な企業では、取締役会の形骸化が図られるであろうし、その必要のない善良な企業では、逆に、意思決定のスピードが遅くなるという実害が出てくる。現在の内部統制制度と同様、無用なばかりか、害がある。速やかな決定が必要な意思決定は、経営会議や執行役員会などの実質的な会議体で審議・決定し、取締役会で承認を受けるという形を取らざるをえなくなる。そうすると、決定までに時間がかかるし、時間とエネルギーもむだになる。

民主党の公開会社法の最大の目玉は、監査役の一部に従業員代表を入れることを義務付けようとしていることである。労働側の要求を経営に反映させる制度が必要だという狙いもわかる。これが企業と従業員の双方の利益につながるかどうかについては慎重な検討が必要である。

日本では、バブル前後に起こった不祥事を防ぐという名目で、株主の牽制力を強める方向で会社法や金融証券取引法の改正が行われた。その結果、短期的な視野での経営が助長され長期のリスク投資が行われなくなり、労働側への分配を減らすために人減らし、非正規雇用への依存、成果主義報酬制度など、従業員の企業への長期的一体感を低下させるような雇用制度が採用されてしまった。企業の元気がなくなってしまったばかりか、社会も不安定になってしまった。この政策の誤りを是正するために、従業員の声を経営に反映させようとしている民主党の狙いは理解できる。その方向での改革は必要不可欠ですらある。しかし、そのための手段はよく考えられなければならない。