民主党は、監査役会に労働側の代表を入れるという手段を考えているようだ。ドイツの共同決定制度を真似ようとしたものだ。しかし、ドイツの監査役会と日本の監査役会とは権限と責任が大きく異なるし、ドイツの制度にも弊害がある。日本の監査役会に労働側の代表を入れることは労働側にとってよい結果をもたらすどころか、労働組合の存在意義が失われてしまう危険すらある。
そもそも企業統治とは、経営者の牽制を通じてよい企業経営を担保するための制度と慣行である。しかし、残念なことに、このようにすればよい統治ができるというような単純なルールはない。そのようなときに一定の統治や経営のルールを法律で決めてそれに従わせるという方法をとると、少なくとも一部の企業には誤った経営や統治を強いることになる。かつての松下電器産業は取締役会に組合代表を入れていた。これは、取締役会ではなく監査役会であるべきだと誰がどのような根拠でいえるのだろうか。
会社統治の法律を細かく決めるという手段に頼るのは、自民党政権と同じ過ちを繰り返すことになる。法律の干渉は最低限にとどめ、後は、企業側の工夫にゆだねるという柔軟性が必要だ。新たにルールをつけ加えるのではなく、誤った経営を強いているルールを即座に廃止すべきだ。急ぐべきは、経営者に短期的な視野を強いる四半期決算制度、硬直的な内部統制制度、時価会計制度を廃止することだ。それだけで日本の企業は元気になるはずである。緩やかなルールのもとで個々の企業が独自の工夫ができるようにしておくのがよい。その中でよい例だと思う企業がそれを手本にすればよい。
法律で定めておかないと手を抜く企業が出てくるという心配をする人がいる。しかし、そのような経営者は少数でどんな法律をつくっても手抜きをする。そのような少数の企業を想定した厳しいルールを多数の普通の会社に適用すべきではない。普通の会社は、自己規律を課せるだけの健全性を持っている。経営者を信じようではないか。
会社統治制度に関して民主党政権の冷静な対応を望みたい。自民党政権の失敗だけは繰り返さないでほしい。