賄賂を渡し続けて1年

それなのにパスポートが取れなかった。何度申請しても却下されるのだ。

上のお兄さんが反政府組織にいることが影響したらしい。「取得までに1年近くかかった」と言うので詳しく聞いたら、それは「パスポートを発給する役人に1年近く賄賂を渡し続けた」という意味で、あっけにとられる。お姉さん夫婦が日本から送ってくれた炊飯器やラジカセを包んで、役人の自宅にせっせと運んだという。

「日本製品を持ったお母さんが、『さあ、お願いしに行こう』って私に声をかけるんです。毎晩のように。私はこんなことしても意味ないだろうと思いながら、母のうしろをついて行く。それがすごくいやでした」

金井真紀『日本に住んでる世界のひと』(大和書房)

役人の家に着いても、相手はすぐに応対してくれない。サンサンさん母娘に「そこに座ってなさい」と言ったきり、自身は家族とゆっくり食事を始めたりして、2時間も3時間も待たせるのだという。そうやって立場の違いを見せつける。さんざん待たせた挙句に賄賂の品だけ受け取って「パスポートがほしければ、また来なさい」。最低なやつだ。

役人はそういう態度を1年近くとり続けた。そして最後に「うちの妻も日本に行きたがっている。その書類も揃えるならパスポートを出してやってもいい」と言ったらしい。日本にいるサンサンさんのお姉さんは、役人の妻を「親戚」ということにして、その書類まで準備させられたのだった。ミャンマーの役人、ほんとに腐ってる。

(後編に続く)

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