国際ビジネスに相応しい環境をつくる
今、TSMCには国際競争力があります。しかし、日本や熊本に競争力がなければ、TSMCの競争力もあっという間に失われます。日本の労働市場は硬直的で、優秀な人材を容易に集められる環境になっていません。
優秀な人材をどんどん集めようと思えば、優秀でない人材にどんどん去っていってもらわなければなりませんが、日本では解雇規制が厳しくてそのような人材の入れ替えは容易にはできません。
優秀な人材を集めるには、解雇規制の緩和による労働市場の流動性が必要不可欠です。解雇された人は行政が支援して、別の企業で活躍できるよう再教育するのもいいでしょう。
現にTSMCが国際競争を勝ち抜いているのは、優秀な人材がどんどん集まってくる人材の流動性が高い企業体だからです。
解雇規制の緩和に徹底して反対しているのは、安泰の地位を与えられた正社員とその正社員で組織される一部の労働組合です。
労働者の40%を占める非正規社員は、たとえ能力があっても実質的に解雇規制の対象外とされ、正社員の雇用を守るために犠牲になっているという現実もあります。正規・非正規の賃金格差と同じく、明らかに不公平です。
労働市場の流動性がない日本に工場をつくって、TSMCは今後も国際競争力を保つことができるのか。また、今般のコロナ禍対応のように法的な根拠があいまいなまま、民間の営業・事業活動を平気で制限する日本で、自由闊達な企業活動を展開できるのでしょうか。
僕は早晩、TSMCが「日本なんかでは、熾烈な国際ビジネス競争を勝ち抜くことはできない!」と怒って日本を去ってしまうのではないかと本気で心配しています。
金を投じて最先端の国際企業を日本に誘致するだけでは失敗します。日本社会を、国際ビジネスをするのに相応しい環境につくり変えていく。
それが日本を前進させるために政治家が力を入れなければならない重要な「改革課題」の1つです。