四文字熟語やカタカナ言葉は言い換えを

「そもそも」を語るうえで歴史を遡ることも欠かせません。しかし、番組の限られた時間の枠の中で、そればかりに時間を割くわけにはいかない。伝えるべき「今」がある。結局、按配ということになるのでしょうが、前段の「そもそも」を説明するのは私の大事な役割だろうと思っています。

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難しいことを聞き手の腑に落ちるように伝える6カ条

わかりやすく伝えるためには、わかりやすい言葉を使うのが基本です。

私がいつも引っかかるのは四文字熟語。原稿に四文字熟語が出てきたときには必ずチェックします。四文字熟語は語呂がいいし、音としては覚えていますが、意味はわかっているようでよくわかっていないということが往々にしてあります。そこで、たとえば「政治主導」という言葉を使うときには、「これまで官僚任せで、国民の意思がなかなか反映されなかった政治のやり方を、選挙で選ばれた政治家が官僚をリードして主導的に政治を行うようにする、この政治主導」というように必ず解説をつける。

難しい漢字に敏感になったのは「週刊こどもニュース」時代から。子供は難しい漢字が嫌いですから、四文字熟語は絶対に使いませんでした。

子供にもわかるように平易な言葉で説明しようとすると、これがなかなか難しい。だから当時は、家の近所にある図書館の児童書コーナーによく通いました。私も最初は知らなかったのですが、自然科学系だけではなく、経済のことを子供向けに解説した絵本や児童書はたくさん出ています。

たとえば円高の仕組みや需要曲線と供給曲線による価格決定のメカニズムを、小学生にもわかるような書き方をしている優れた本もある。換骨奪胎して完全に言い換えているのに間違いではない、わかりやすい言い回しをしている本に出合うこともあれば、ときには「である」を「です、ます」調に変えただけの“子供だまし”に遭遇することもあります。

専門家が子供向けにどういう言い換えをしているのか、随分、参考にさせていただきました。使えそうな表現に出合うとノートに書き写したり、読んだ本のタイトルを赤丸付きでメモしたり。

その頃からの習慣で、難しい言葉に出合うとなるべく別の、ひらがなの多いやさしい言葉に言い換えることを心掛けています。

外来語やカタカナ言葉も同じです。たとえば「コンプライアンス」は直訳すれば「法令遵守」ですが、日本語訳の意味もわかりにくい。「企業には守るべき法律や、社会の要請に応えて守るべき企業倫理や社会的責任というものがある。それを守らなければ企業のトップに大変な責任が課せられたり、信用を失って企業の存続そのものが危ぶまれるようなことにもなるので、ビジネスの世界で関心が高まっている」くらいまで説明できれば、聞いている人も理解しやすい。

決まりきったフレーズ、言い回しというのも注意が必要です。同じフレーズを何回も何回も使っていると、それで皆わかったような気になる。

※すべて雑誌掲載当時

(小川 剛=構成 的野弘路、斎藤 文=撮影)
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