性をタブー視する空気、ファンからの反応…
性をタブー視する空気がこの国では強いのと、被害者側にも非があったのではないかなどという心ない発言をする文化人や政治家までいる。
ましてや、10代半ばの男が、いくら年上とはいえ、性的虐待を受けたといい出すのは、日本的風土の中では難しい空気がある。
「なぜ逃げなかったのか」「合意の上だったのではないか」などと批判されることもあるし、肉親から、「世間体が悪い。私たちが恥ずかしい思いをする」という声も出る。
アイドルとして人気があるのに、そんなことを告白したら、ファンの女の子たちが離れていってしまうという恐怖感も当然ある。
それらがないまぜになって、これまで、ジャニーズ事務所のアイドルたち、とくに売れっ子たちは、スターの座を投げ捨ててもジャニー喜多川氏に虐待を受けたことを漏らす人間が出てこなかったのだろう。
そんな中でも勇気をふるって告白した元フォーリーブスの北公次のような人間もいた。『さらば‼光GENJIへ』(データハウス)という本を何冊も出し、自らの恥部をさらけ出したのだが、新聞はもちろんのこと、テレビも大手出版社から出している週刊誌もほとんど大きく扱うことはなく、メディアに守られて喜多川氏の性的虐待問題は、闇から闇に葬られてきたのである。
日本のメディアの責任は重大だ
『文春』は、「ジャニー氏の行為は、青少年健全育成条例や、刑法の強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪に抵触する可能性もあった」と書いているが、被害を受けた人間たちが訴えたら、間違いなく強制わいせつ罪になったケースはあったはずである。
ワインスタインは、スターへの切符となる映画のキャスティング権を握っていることが、性加害に至る権力の源泉になった。「俺のいうことを聞けば、いい役を与えてやる」というエサを見せ、女優たちを思いのままに性的蹂躙をしてきたのである。
ジャニー喜多川氏も、いうことを聞けばスターにしてやる、舞台の中央に立たせてやるという言葉で、相手を黙らせてきたのだ。
ロバーツ氏と一致したのは、日本のメディアの責任が重大だということだった。
ジャニー喜多川氏の自社タレントたちへの性的虐待については、芸能マスコミだけではなく、大手新聞もテレビも気がついていたのは間違いない。
だが、日本の大新聞は傘下にテレビ局を持っている。そのため、ジャニーズ事務所の機嫌を損なうと、事務所のタレントたちが自局の番組に出てくれなくなると考えたのであろう。この問題に真剣に取り組んだ新聞、テレビは一つもなかった。
『文春』のキャンペーンに対して、1999年11月、ジャニー喜多川氏と事務所は、『文春』を発行している文藝春秋に対して、名誉毀損の損害賠償を求めて提訴した。