「日本列島改造論」の呪縛はいまも生きている
――なぜ計画を止められないのでしょうか?
インフラが利権の塊だからです。新幹線の駅の誘致は、政治家の票に結びつく。延伸工事などにたずさわる下請けの地元建設会社にもお金が落ちる。それもまた票になるから、誰も現状を変えようとしない。
では、路線を延ばし続ければ、どうなるのか。JRは、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構に線路使用料を支払っています。利用者が減り続ければ、そう遠くない将来に赤字になり、線路使用料さえ支払えなくなるでしょう。税金でまかなうにしても限界がある。インバウンドが期待できると考える人がいるかもしれませんが、日本の鉄道によほど関心を持つ旅行者でない限り、飛行機を使います。冒頭で指摘したとおり、そのツケはやがて利用者である国民ひとりひとりに跳ね返ってくる。
鉄道行政が抱える矛盾点を洗い出していくと、ひとつの結論にたどり着きました。それが日本の鉄道事業は、いまだに田中角栄の“日本列島改造論”の呪縛から逃れられていない、ということ。政治家や官僚のなかでは、50年前に計画された“日本列島改造論”が生きている。その事実に気づき、愕然とさせられました。(後編に続く)