なぜ「映える投稿」にこだわるのか?

もう少し、彼らの表現のこだわりについてお話しします。ビジュアルコミュニケーションでは視覚的な情報が最も重視されますが、最も分かりやすいのは「映え」なのではないでしょうか。

【生の声】遊びに行ったらカメラロールが同じ写真で埋め尽くされる。
長田麻衣『SHIBUYA109式 Z世代マーケティング』(プレジデント社)

「インスタ映え」という言葉が流行語大賞に選ばれたのは2017年ですが、Z世代は「映えること」を当時から変わらず非常に重視しており、SNSには「映える」写真や動画を投稿することが、彼らの暗黙のルールになっています。

彼らは「映え」を求めて、カフェや旅行など様々な体験に積極的に出向き、そこで必ず写真や動画を撮影します。

撮影をすることを見越して、事前に友達と当日のファッションスタイルについて相談し、“おそろコーデ”(お揃いのコーディネート)や“リンクコーデ”(友達とコーデの一部をリンクさせる)をして出かけることも当たり前です。そして撮影枚数も2枚や3枚ではありません。スマートフォンのカメラロールがほぼ同じような写真で埋め尽くされるくらい撮影し、その中からSNSに投稿できるベストショットを選び抜いています。

「有名になりたい」わけではない

なぜZ世代にとって「映える」ことが、ここまで重要なのでしょうか? 彼らにその理由を聞いてみても、「インフルエンサーになりたいから」とか「SNSのフォロワーを増やしたいから」といった“有名になって承認欲求を満たしたい”的な声はほとんど聞かれません。

こうした「映え」へのこだわりには、実は彼らのコミュニケーションに対するモチベーションの高さが関係しています。多くのZ世代は「映え」ている写真や動画をSNSに投稿することで、SNSで繋がる友達から、「ここに遊びに行ったんだ!」「かわいい!」などの反応を期待しています。この反応をきっかけに、新たなコミュニケーションが生じ、同じテイストの「映え」が好きな友達と繋がっていくキッカケが生まれることに高い価値を感じているのです。

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