行動の原因がその人自身にあると考える

ある実験で、観察者は出題者1名と解答者1名がクイズゲームをするところを見ていました。このゲームでは、出題者は自分の得意分野から難しいクイズを10問考えて出題し、解答者は平均4問に正解しました。

ゲームのあと観察者に、出題者と解答者の一般知識がどの程度あると思うか尋ねたところ、「出題者は非常に博識だ」と評価した一方で、「解答者は平均的な学生と同じ程度だ」と評価しました。

出題者は自分の得意分野から難しいクイズを作成しているので、解答者の正解率が低いのは仕方のないことです。それなのに、状況の影響を考慮に入れずに、「解答者の正解率が低いのは、出題者の能力が高いからだ」と判断したため、このような評価になったと考えられます。

ものごとの原因を推測する過程を、心理学では原因帰属、あるいは単に帰属と言います。

私たちは他者の行動の原因を考えるとき、本人の性格や能力のような、その人自身にかかわる内的要因を重視し、周囲の状況などの外的要因は軽視する傾向があります。この傾向は、他者の行動の原因を考えるときに普遍的に見られることから、「基本的な帰属のエラー」と呼ばれます。

視点と情報の違いがバイアスを引き起こす

こうした原因の帰属は、自分が行為者か観察者かによっても変わります。

たとえば、自分がデータをなくしたり物を壊してしまったりしたときには、「仕事が多いから」「こんなところに物が置いてあるから」などと状況や対象のせいにするのに、他人が同じことをしたときには、「整理整頓ができないから」「そそっかしいから」などと、その人の能力や性格、努力不足などのせいにしたことはないでしょうか。

自分が行為者のときには状況に原因があると考え、観察者のときには行為者自身の内的要因に原因があると考えることを、「行為者-観察者バイアス」と言います。自分が「行為者」であるか、「観察者」であるかで、ものの見方が変わってしまうわけです。

行為者と観察者とで原因の帰属が異なる理由として、次の2つが関係すると考えられています。

1つには両者の視点が異なること。行為者は周囲の様子のみを見て行動するため、周囲の中で目に留まる状況や対象に原因を帰属しやすくなります。一方、観察者は人物と周囲が描かれた絵を鑑賞するように、行為者を「周囲の中の人物」として見るため、人に原因を帰属しやすくなります。

もう1つは利用できる情報の違いです。行為者は自分の過去の行動に関する情報と、現在の行動とを照らして考えることができます。一方、観察者はそうした情報を持っていないため、自分が目にした行動から容易に推測できるその人の能力や性格などに原因を帰属するわけです。

観察者であっても、行為者の視点に立つと、行動の原因を人の能力ではなく状況に帰属することが報告されています。

ある実験では、ビデオの中の人物の「感情」を想像して共感的に観察する参加者と、その人物の「動作」に注意して観察する参加者とに分けました。そしてビデオ観賞後に人物の行動の原因を推測してもらった結果、共感的に観察した参加者は、動作を観察した参加者よりも、原因を状況に帰属する傾向が強いことが明らかになりました。

イラスト=ナカオテッペイ