脳を意図的にコントロールしている存在

これはあくまでわかりやすい一例にすぎませんが、実際には言葉で説明することも難しいようなアルゴリズムによって、私たちは無意識に情報を刷り込まれています。すると、自分で物事を考える能力がだんだんと衰えていってしまうのです。

それゆえに、投資や転職などのライフプランなど、しっかりと後先を考えて長考することが大切な決断も、誰かの発言に影響されてよく考えずにしてしまうことになるのです。

私たちの脳は、自分が欲している情報を得ようというバイアスのもとに働いているのですが、それを意図的にコントロールしている存在がある、くらいに考えても過言ではないと思います。考える力が衰えた人にとって、力強く決断を下すための材料を提供してくれる人は非常に頼もしく思えますから、妄信的に信じることにつながっていくのです。

人生の重要な決断も他人に委ねるようになる

自分が誰かの考えに強い影響を受けていることを自覚できないと、ますます自分で考える能力が衰えていきます。強い意見を言ってくれる人が、頼りがいがあるように見えたら要注意です。なるべく自分で考えなくてもいいような、楽な道(その先には大変ないばら道があるわけですが)へ片足を入れているサインだと思ってください。

初めは小さな意思決定へのヒントを求める程度だったのが、次第に、自分の人生にとっての重要な決断でさえも、他人に判断を委ねるようになっていく末路が待っています。

資本主義社会のもとでは、多くのことがお金で動いています。これはSNSに限らず、日常のサービスでも同じですが、企業は自社の商品を購入してもらうために、いかに消費者が「考えないようにするか」を考え、宣伝のための努力と工夫を凝らしています。

たとえば、「老後二千万円問題は、マンション投資で解決」「サプリを飲むだけで、つらい腰痛がなくなります」など、にわかには信じがたいことでも「老後の不安がこれで解消されるならやってみようかな」「飲むだけで腰痛がなくなるならうれしいわ」と、あまり深く考えずにサービスにお金を払うように仕向けているのです。

ここには怪しくて極端な例をあげましたが、もちろん、優良なサービスもあります。ここで指摘しているのは、宣伝文句も含め、耳当たりのいい他人の言葉を鵜呑みにすることで、利用されたり、決断を誤ったりするリスクが大きくなっていくということです。それを防ぐためには、自分自身で経験を積み、しっかりと自分ごととして物事を考える訓練が必要なのです。