いかにアルコールを胃にとどまらせるかが鍵

では、どうすればアルコールの血中濃度の上昇をゆるやかにできるのか。

「アルコールを飲んで、カラダの中でまず吸収されるのは胃です。といってもアルコール全体の吸収に占める割合はわずか5%程度にすぎず、残りの95%は小腸で吸収されます。小腸の内壁には腸絨毛ちょうじゅうもうと呼ばれる突起があり、大人1人当たり数百万から数千万存在しています。これらの表面積を計算すると、平均的な体形の成人男性の場合、テニスコート一面とほぼ同じとも言われています。胃より表面積が大きな小腸のほうが吸収量が多く、吸収速度が速いわけです。

アルコールが腸に送られれば一気に吸収されます。ですから、いかに胃でのアルコール滞留時間を長くし、小腸へ送る時間を遅くするかが、アルコールの血中濃度を上げない(=酔いを遅くする)カギになるのです」

なるほど、できるだけ胃の中に入った内容物を胃にとどめ、小腸に行く時間を遅らせればいいわけだ。実際、松嶋さんによると、胃の中での滞留時間は、食べ物によって変わるという。

「胃での滞留時間」とは、「その食べ物を胃で消化して、胃から排出されるまでにどのくらいの時間がかかるか」ということ。では、できるだけ長く滞留する食べ物とは、具体的にどんなものだろうか。

飲み会では“油を使ったもの”を先に食べる

「それは油です。油分は胃での吸収時間がとても長い。消化管ホルモンの一種であるCCK(コレシストキニン)などが働き、胃の出口となる幽門を閉め、胃の中を撹拌する働きがあるのです」

何と油とは! 確かに、油は胃にもたれそうだし、胃の中での滞留時間が長くなりそうではある。

胃の滞留時間は、食べ物によってかなり異なる。例えば、米飯(100グラム)は2時間15分で消化するのに対し、ビーフステーキ(100グラム)は比較的長く、3時間15分程度かかる。油は最も長く滞留し、バター(50グラム)は12時間もかかる。こうしたデータを見ても、いかに油が長時間胃に留まるかが理解できる。