すでに黒田総裁は昨年末、長期金利操作の許容変動幅を従来の±0.25%から±0.5%に引き上げると表明した(事実上の利上げ)。日銀の国債評価額は8849億円(昨年9月末)から、わずか3カ月で8兆8000億円(昨年12月末)に拡大。日銀の内部留保が11兆円であることを考えると巨大な損失を出している。

仮に植田日銀が許容変動幅をもう0.25%上げたら、単純計算で、さらに8兆円も評価損が増えることになる。内部留保や保有株式の評価益も食いつぶし、完全な債務超過となる。

さらに地銀や生保も、日銀が長期金利操作の許容変動幅を0.5%に上げただけで含み損が発生し始めている。日経新聞電子版によると、主要15社の生保合計の国内の公社債は約5兆5600億円(昨年9月末)の含み益から一転、約3600億円の含み損とのこと。

2011年1月21日、アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁、フィリピンのADB本部にて。(写真=Asian Development Bank/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

黒田路線は簡単に変更できない

たった0.25%の上昇で約6兆円も評価額が下落したのだ。日銀にひけをとらない評価額の下落ぶりだ。つまり、日銀が許容変動幅を0.25%でも上げたらとんでもないことになる。地銀も連鎖倒産のリスクが出てきそうだ。

どんなに物価が上昇しようと、日銀は長期金利0.5%を死守するために国債爆買い(=お金の垂れ流し)を継続しなければならない。簡単に政策変更などできないのだ。

さらに日本国債の格付けの問題もある。12月26日の日経新聞によると、フィッチで国債格付けを担当するクリスヤニス・クルスティン氏が「日銀の国債購入は格付けを支える要因の一つ」と明言している。日銀がYCCを止めれば、トリプルB評価のイタリア以下の格付けになる可能性もある。ダブルBならジャンク債扱いで日本経済事態が大変なことになる。

ちなみに格付けやCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は単に国の破綻確率にすぎない。日銀の国債爆買い(=紙幣の爆刷り)ではハイパーインフレが生じても、必要なら必要なだけ紙幣を刷れるのだから国の破綻確率は低い。

YCCを解除したらどうなるか

このように今の大規模緩和に課題認識を持っている植田氏は、以上述べたリスクは承知のうえで、少しずつYCCを解除していくのだろうと、私は考えている。

日経新聞2月1日のコラム「大機小機」は、「10年債利回りは下がってきたが、YCCを外しても目先1%程度までの上昇にとどまるとの見方が多い」と紹介している。こうした前提で出口を抜けられると考えられているであるならば、市場の反応に対する感覚で私とのずれがある。

YCCを解除しても長期金利はそれほど上昇しないという考えは、見通しが甘すぎる。「甘っちょろい地獄」で済むはずがない。