大きな構造変化が起きても対応できるのか

一方、AI利用にはデメリットもある。常に、対話型のAIが正しいとは限らない。まだ、性能は人間の知能には及ばない。2月8日、グーグルではAI回答の間違いが発覚し、親会社アルファベットの株価(A株)は前営業日から7.7%下落して引けた。また、構造変化への対応力にも不安がある。

AIは過去のデータを学習して精度を高める。問題は、リーマンショックのような大きな構造変化が発生した場合、AIが社会と経済にプラスの価値を提供するか否か、不透明な部分が多いことだ。さらには、ディープフェイク(AIを用いた画像、動画の改編)やフェイクニュースなどは急増し、特定の人物に都合の良い、誤った情報が流布する恐れも増す。

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その摘発にはかなりのコストがかかるだろう。著作権、肖像権などへの対応も課題だ。なお、イアン・ブレマー氏率いる調査会社ユーラシア・グループは、2023年の“世界の10大リスク”の3番目に“大混乱生成兵器”としてAIを指摘している。

日本企業が参入するチャンスはある

今後、米・中などを中心に、AI利用をめぐるIT先端企業などの競争は激化するだろう。それに伴い、注目が高まると考えられる分野の一つは半導体だ。AIの深層学習強化に決定的な役割を果たしてきた画像処理半導体(GPU)の設計、開発、製造競争はさらに熾烈になるだろう。

現在、エヌビディアは新しいGPUを搭載した、より高性能のスーパーコンピューター開発に集中し始めた。マイクロソフトはエヌビディアと提携して、クラウド空間でのAI利用技術の向上に取り組む。中国も社会、経済の統制強化などのためにAIの利用を急いでいる。AI利用をめぐる企業の競争激化は、半導体など先端分野における米中の対立を一段と先鋭化させる要素の一つと考えられる。

マイクロソフトなどの取り組みに比べ、わが国企業によるAI利用は遅れている。それは、中長期的なわが国経済の“遅れ”になると懸念される。ただ、すぐに先行きを悲観するのは早計だ。チャットGPTなどは利用の初期段階にあり、これから解決されなければならない課題は増えるだろう。楽観はできないが、本邦企業の対応次第によっては、わが国が遅れを挽回する可能性はある。