「構成を考え、検索し、書く」という手順は不要に

例えば、仕事でレポートの提出を求められたケースを想像すると、多くの人は、まずレポートの構成を検討する。次に、グーグルなどのサイトで検索を行い情報やデータを手に入れる。報告すべき内容を書き、データをグラフなどにまとめレポートを作成する。その際、ネット検索をしても必要な情報が、短時間で確実に得られるとは限らない。状況によっては参考文献を探すのに想定以上の時間がかかることもある。考えを文書にまとめるのも時間がかかる。

しかし、GPT-3はそうした手順を飛び越え、利用者が欲する回答を、あたかも友人が目の前で文書を作成してくれるかのような形で示す。昨年のチャットGPTの公開に続き、1月にマイクロソフトはオープンAIへの追加投資を発表し、2月には検索エンジン“Bing(ビング)”にチャットGPTの技術を搭載すると発表した。2022年10~12月期GAFAMのいずれもが減益に陥ったこともあり、マイクロソフトの一連の発表は、急速に対話型AIへの注目が増えるきっかけになったといえる。

営業やクレーム対応、法律相談、遠隔診療…

チャットGPTの注目急増に伴い、AI利用の功罪=メリット、デメリットもより鮮明になる。主たるメリットは、世界全体で経済運営の効率性が一段と高まる可能性だ。レポートのケースからわかるように、対話型(言語型)AIは、情報利用の効率性を大きく高めるだろう。具体的なケースとして、株式アナリストは、企業の財務データを収集し各種収益率や投資尺度を計算する負担を軽減できるかもしれない。

他にも営業、カスタマーサポート、クレームへの対応、法律相談、遠隔診療など、AI利用によって利便性の向上と、企業の事業運営の効率性向上の可能性は高まる。そうした新しい需要の創出期待を背景に、AIは世界のIT先端企業などにとって最重要分野とみなされ始めた。

マイクロソフトは既存事業でリストラを進めつつもAI関連の事業運営体制を強化している。グーグルも新しい検索サービスの“Bard(バード)”の試験提供を開始した。それに伴い、ヤフーからグーグルにシフトした検索分野の競争優位性が、マイクロソフトに染み出るのではないかとの見方も出始めている。中国ではバイドゥが“文心一言(アーニー・ボット)”と呼ばれる対話型AIサービスの提供を目指している。