さらに世の中には、どうにもならない運とともに、「自分は他人より不運だと感じている人」がかなり存在しています。少なくとも「自分は他人より幸運だ」と感じている人よりも多いことは容易に想像できます。

旅先では雨に降られ、職場では嫌な相手とペアを組まされ、有名店の行列に並んだら自分の手前で商品が売り切れる……。この不運が起きる人の特徴のような現象は、はたして、特定の人に集まるメカニズムでも存在するのでしょうか?

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この問題について、中国科学院のチームがおもしろい実験をしています(4)

研究チームは、参加者が過去に交通事故を起こしたかどうかを聞き、そのあとで全員に複数の写真を見せて脳波の反応スピードを調べました。使われた写真の種類は3つで、「ポジティブな写真(喜ぶ人々など)」「ネガティブな写真(泣き叫ぶ子供など)」「ニュートラルな写真(町の風景など)」といった画像が80枚用意されたそうです。

そこでわかったのは、過去に人身事故のように大きな事故を起こした人ほど、悲観的な情報に反応しやすいという事実でした。

交通事故を起こした人ほど、ネガティブな感情に敏感

事故が少ないドライバーは、ポジティブな写真とネガティブな写真の両方に等しく注目したのに対し、事故が多い人は、悲惨な写真に長く意識を向けたのです。つまり、事故が多いドライバーほど、ネガティブな情報に敏感だったことになります。

不思議に思われた方もいるでしょう。車を安全に運転するためには、ネガティブな情報へ積極的に目を向けねばなりません。沿道に飛び出しそうな子供や、路肩を蛇行する自転車などを見逃したら、事故の確率が上がるのは確実です。

それにもかかわらず、ネガティブな情報への反応が大きい人ほど事故が多い理由は、どこにあるのでしょうか?

その答えは、ネガティブな情報に意識が向きやすい人ほど、視野が狭くなってしまうからです。

たとえば、あるドライバーが車を運転していたところ、対向車線にスピード違反の車が現れ、すさまじい速度ですれ違ったとしましょう。

このような場面では、優良ドライバーは「危なかった」とだけ思って、すぐに目の前の道路に意識を向け直します。ところが、事故が多いドライバーは、いつまでもスピード違反者の情報が頭に残り、簡単に注意を切り替えられなくなるのです。

マイナスの体験がさらなる不運を呼び込む

こうした現象を、専門的には「ネガティビティ効果」と呼びます。肯定的な情報よりも否定的な情報に関心が向く心理のことで、この傾向が強い人は、人生の悪い所ばかりが気になり、それゆえに視野が狭まってしまうわけです。

ネガティビティ効果と交通事故の関係は何度も確認されており、アイルランド国立大学などの報告では、この心理傾向が強い人ほど余計なことに気を取られ、やはり重大な事故を起こしやすかったとのこと(5)。英オープン大学の実験でも結果は同じで、ネガティビティ効果にとらわれた人は一度にひとつのことしか意識を向けられなくなり、目の前の重要な情報を見逃す可能性が高まりました(6)