問題なのは、こういったマイナスな体験の積み重ねが、さらなる不運を呼び込む点です。いったん「私は不運だ」との印象が脳の奥に根づくと、あらゆる場面でネガティビティ効果が発動しはじめます。
不運の悪循環を断ち切る方法
ネガティビティ効果の罠を逃れ、広い視野をキープし続ける。
この目標に挑むために使ってほしいのが、「視野拡大アクションリスト」です。50種類の行動で構成されたリストで、ネガティビティ効果をやわらげるために開発されたものです。
1:感情が不安定になったら、立ち止まって何度も深呼吸をする
2:少なくとも5分間、意図的に笑顔を作ってみる
(ひとりでいるときでも、何かをしているときでもよい)
3:ほかの人に感謝の気持ちを伝える
(例/友人に感謝の気持ちを伝える、良い働きをしてくれた部下に感謝するなど)
4:何か心配なことがあったら、それを自由に紙に書き出してみる
5:目が覚めたら5分以上の瞑想をする
6:決断に不安を感じたら、それぞれの選択肢の長所と短所をリストアップする
7:見返りを期待せずに、ほかの人に親切なことをする
8:少なくとも10分間、スマホで自分が幸せだと感じる写真を探してみる
9:最低でも15分は運動してみる
10:今日1日のなかで、少なくとも5つのポジティブなことを思い出す
(例/「今日は空がきれいだ」「今日は友人に会えて良かった」「このソファは座り心地がいい」「川の音がすばらしい」など)
南メソジスト大学による実験では、50のアクションを実践した被験者は、4週間ほどで有意な改善が見られました。具体的には、全体的にネガティブな感情を体験する回数が減り、神経質な人はよりおおらかになり、怒りやすい人には余裕が生まれ、ポジティブな気分が増大したのです。
リストの使い方は簡単です。まずすべてのアクションをざっと確認したら、「これならできそうだ」と思えるものを選び、週に1~4つずつ、4週間ほど続けてください。いずれのアクションも「心に余裕がある人」の行動をシミュレートしており、どれだけネガティビティ効果が強い人でも、続けるごとにメンタルが穏やかになっていくはずです。
「不運な人」は身の回りに起きた幸運に気づかない
視野拡大アクションリストを使って、ネガティビティ効果を退けられたら、すぐに運がいい人になれるかと言ったら、現実はそう簡単ではありません。
運がいい人は、訪れた運に気づき、つかむのも上手です。
ひとつ例を挙げましょう。
1945年。軍需産業の技術者だったパーシー・スペンサーが、軍事用レーダーの実験中に、ポケットに入れたままだったチョコレートが溶けたのを発見。これをもとにマイクロ波で熱を生む装置を思いつき、2年後には現代でも使われる電子レンジのひな型が生まれました。
この発明に、スペンサーの察知力が役立ったことは言うまでもありません。「レーダーでチョコレートが溶けた」という偶然に対して、ただ「お菓子を無駄にした」としか思わなかったら、電子レンジは世に出なかったはずです。