痛みや苦しみを取り除くことで「よい死」を迎えられる

ホスピスでは、死が日常的に訪れます。しかしその死は、私が以前思っていた「怖く、悲しく、不条理なもの」ではありませんでした。

ホスピスでの死は「感謝」「笑顔」そして、「希望」なのです。

ホスピスだからできたこと、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ホスピスは、患者さんの痛みや苦しみを取り除くための治療やケアを専門に行うことで、残された時間を安らかに過ごすための場所です。

さらには、患者さんご本人だけでなく、家族の悲しみを精神的に支える役割も担っています。こうした環境が整っているから、感謝と笑顔が生まれ、希望が残るような看取りが可能となる――。

たしかに、ホスピスだから本人も家族も心残りのない「よい死」を迎えることができるというのは事実だと思います。

ホスピス以外の場所でも緩和ケアは進んでいる

では、ホスピス以外の環境で、幸福ともいえる死を実現することはできないのでしょうか。

四宮敏章『また、あちらで会いましょう』(かんき出版)

私は、できると考えています。

まず、死に至るまでの痛みや苦しみは、医療技術の発達と緩和ケアに対する認識が医療者全体に普及したことによって、一般の病院でもかなりの部分を取り除くことができるようになってきています。

さらに今では住み慣れた自宅で最期の時間を過ごして旅立たれる人たちも多くなっています。身体的な面ばかりではなく、精神的な悩みや苦しみに対するケアも同様です。

また、緩和ケア医療の対象はこれまでがん患者さんがほとんどでしたが、生命の危機に直面する疾患をもつがん以外の患者さんに対しても、緩和ケアが導入されつつあります。こうした現状と展望から、死にともなう痛みや苦しみは最小限に抑えることができるといえます。