火災保険や入院保険も未加入?
運転免許の更新もしていない。自動車保険に入っているかどうかも忘れてしまっている。
ということは、入院保険や預貯金についても把握していない可能性がある。
「火災保険とか入院保険とか、大切なものは、いざというときのために、わかるところにひとまとめにしておかなくちゃ駄目だよ。どこにしまってあるか、わかってるの?」
auショップから叔父宅に戻ったタイミングで確認すると、
「保険……。そんなもん入ってねーよ」ある意味予想通りの答えが返ってくる。
「入ってないってことはないと思うんだけど」
私は自動車保険のときと同じ反応をする。
「火災保険ってわかる? 火事になったときや、地震や台風の被害に遭ったときのために入っておく保険のことなんだけど」
「わかるよ」
「本当に入ってないの?」
「入ってねーよ」(後日、年に一度送られてくる通知で農協の火災保険に入っていることが判明)
「そうなの? でも、この家が火事になったらどうするの? 叔父さんも叔母さんも住むところなくなっちゃうんだよ」と言いながら、言うだけ無駄だと気持ちを切り替える。
「じゃあ、入院保険は? 病気や怪我で入院することだってあるでしょ」
何とか記憶を引き出そうとするが、
「入ってねえと思うよ」叔父の視線は宙を彷徨っている。
「本当に入ってないの?」
叔母に視線を送ると、
「叔父さんは入ってなかったと思うよ」
これまたのんきなんてものではない。
高齢とはいえあまりに世間知らずな叔母
「ってことは、入院したときとか、手術をしたときとか、(差額ベッド代や食事代などが)全額自己負担になるんだよ」
「病院に行かなきゃいいんだよなあ」
「行かないに越したことはないけど。そういうわけにいかないときだってあるでしょ。転んで怪我するとか、お腹が痛くなるとか、救急車で運ばれることだって、入院しなきゃいけないことだってあるかもしれないんだから」
冷静に話そうと思いながらも、どんどん声が尖ってくる。
「叔母さんは? 叔母さんも入ってないの?」
「私は、郵便局の保険に入っていたような気がするけど……」
気がする、じゃないでしょ!
「じゃあ、保険証券は? どこにしまってあるの? どんな特約が付いているか確認しておきたいんだけど」
「保険証券……。叔母さんは、そういうことはわからないから、今度、郵便局に行ったら窓口のお姉さんに聞いてみなきゃね」
それ、人に聞くことじゃないでしょ。
思わず膝から崩れ落ちる。
駄目だ、この夫婦。いくら高齢とはいえ、あまりに管理能力がなさ過ぎる。