まさか自動車保険にも入っていない?

諸手続きを終えて叔父宅に戻ると、車のキーを預かり、すぐに廃車の手続きをする。

これで一件落着と思いきや、そう簡単に事は終わらない。

免許更新、日本免許更新、日本
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

「自動車保険の解約もしなきゃいけないよね。保険証券はどこにしまってあるの?」

「保険……。入ってねーぞ」

「入ってないってことはないと思うよ。知り合いの保険屋さんとか、自動車を買ったお店経由とか……」

叔母に聞いても、「私は何もわからない」と繰り返すだけ。

「保険とか、税金とか、年に1度通知が届くと思うんだけど、そういう大切な手紙はどこにしまってあるの?」

「……どこだったかなあ」

どうでもいいようなダイレクトメールの類いは、茶の間に置いてある箱の中に無造作に重ねて取ってあるのだが、肝心要のものは見当たらない。

「じゃあ、貯金通帳を見せてもらってもいいかなあ。口座引き落としになっていれば、入ってる保険会社がわかると思うから」

抵抗されるのを承知で聞くと、いつも持ち歩いている革のセカンドバッグを差し出してくる。中を見ると、実印、マイナンバーカード、銀行と郵便局の通帳数冊(要するに叔父の全財産)が入っている。警察で、「トイレに行ってくる」と言って立ち上がったとき、このバッグを長椅子に置いたままその場を離れようとしたので、「叔父さん、いくら警察署の中でも置きっぱなしは駄目だよ」と、注意したばかりだ。

認知症が進みお金の管理もできなくなっていた

「もしかして、実印と通帳をいつも持ち歩いていたってこと……?」

思わず頭を抱える

年金の受取口座になっているC銀行の通帳をチェックすると、毎年4月に一定の金額が「ソンポジャパン」に引き落とされている。金額から推測し、これが自動車保険で間違いないだろう。

ただ、保険証券の在処がわからないため、代理店も担当者もわからない。叔父や叔母を当てにせず自力で探し出すしかないと判断し、保険代理店をやっている同級生に電話を掛け、調べてもらって一件落着。だがしかし、ここでまた事件が発覚する。

「こっちの通帳もまだ使ってるの?」

C銀行のもう1冊の総合口座の通帳を開くと、残金が3000円ほどしかない。よく見ると、電気、ガス、水道、NHK、NTTなど、公共料金と固定資産税などの引き落とし専用の口座として使っているようで、半年に一度くらいの割合で、年金受取口座から一定額がこの口座に振り込まれている。ただ……、ここ1年ほど入金した形跡がない。ということは、運転免許証の更新の手続きや、こうした日常生活に欠かせない出費の管理がここ1年くらいの間にできなくなってしまった可能性が高い。