800円の定額制で採算は取れる

栗岡氏が提唱するのが「高速道路の廉価定額制」である。

公表されている資料から2021年度の年間での料金収入を走行台数で割ると、NEXCO東日本では一台当たり746円、NEXCO中日本では911円、NEXCO西日本では682円。3社平均は763円だった。さらに過去15年にわたっても調べたところ、平均額は553~826円の間を推移していた。

つまり、高速道路料金を「800円」の定額制にしても現在と同水準の料金収入が得られるということである。

裏を返せば、現在は800円からターミナルチャージ150円を引いた650円分の距離(26.4キロ)程度しか平均では走っていないということでもある。これは高速道路のもつ「都市間を高速でつなぐ」という機能を全然生かせていない現状を明確に示している。

「日本で『ロジスティック』を『物流』と訳したのは大きな間違いです。本当の意味はまず『人流』があって『物流』、そして『情報流』が含まれるのです。高速道路の利用が促進され、都市間の移動がもっと活発化するとそうした本当の意味でのロジスティックが進み、日本経済にとって大きなプラスとなることは間違いありません」

実際にその成功例もある。

2009年3月から2011年6月まで「土日だけ、ETCを搭載した乗用車に限り」上限1000円での走り放題の料金制度を実施した結果、高速道路の通行量は2008年度の約23億台から2010年度には約27億台へと2割程度増加した。国交省はこのときの検証として、観光消費拡大は直接効果として年間3600億円、間接効果も含めると年間8000億円と試算しているのだ。

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料金の見直しが日本経済再生の起爆剤になる

定額制にすることの利点はこれだけではない。

「日本の高速道路の欠点は出口で料金を支払うため出口が少ないことです。それによって渋滞も生まれやすい。定額制にすれば入口で料金を支払えばいいので、もっと短い間隔で出口を作ることができるし、料金所が不要になるため渋滞も大幅に防ぐことができる。それによって走行速度も速くなり、都市間の移動時間も短縮できる。その上、道路の補修費用も確保できる。安くなれば利用者も増えるので今まで以上の料金収入を得る可能性だって十分あります」

また、今は距離料金を念頭にしたさまざまな割引制度があるが、こうした複雑な料金制度も必要ない。深夜割引を利用するために夜間に走ったり、安く済ませるために下道を使っているトラックドライバーの負担軽減にもなる。