章男氏だからできた功績の数々
2019年には、国内自動車メーカーではダントツに早いサブスクリプションサービス「KINTO」の本格導入や、「もっといいクルマ作り」を加速させる愛知のニュルブルクリンクたる本格テストコース「Toyota Technical Center Shimoyama」の一部運用開始、自工会会長としてですが来場者数7割増しで実に12年ぶりに100万人を超えた「第46回東京モーターショー2019」の大成功っぷり、翌2020年、痛みも伴うはずの全車種全店併売化の国内セールス改革……などなど。
章男氏でなければありえなかっただろう改革や変化は枚挙に暇がありません。
また規模は違えど敬意を持ちつつのマツダとの技術提携や、ダイハツというコンパクト専業メーカーを傘下に抱えつつ、ガチ競合のスズキと資本提携をするなど仲間作りもオキテ破りの連続。
社長が代わると会社って本当に変わるんだな……と何度も思わされました。どれもサラリーマン社長では絶対にできない抜本的な変革ばかりです。
唯一腑に落ちなかったEV
ただし、小沢的に唯一腑に落ちていないのがEVについてです。それも全社的EV戦略ではなく、イチプロダクトについて。
これまでトヨタは「EVビジネスで遅れている」と何度も言われ続け、それに対する回答として2021年12月に「バッテリーEV(電気自動車)戦略に関する説明会」を開きました。その内容は素晴らしかったと思います。
そして2030年のEV(と燃料電池車)の販売目標の(200万台から)350万台へ引き上げ、2035年にはレクサスを100%BEVにするとも宣言しました。その意気や良しで、確かにトヨタらしいくEV以外に燃料電池車もガソリン車もハイブリッド車も全力投球する全方位戦略です。
そんな中、2022年に満を持してリリースされた、トヨタ初のBEV専用プラットフォームにより作られたbZ4X。良いところもありますし、トヨタならではの安全思想はさすがですが、意図が見えないところも多かったのです。
71.4kWhの大容量リチウムイオンバッテリーやWLTCモードで最長559kmの航続距離、FFモデルが150kW(約203ps)、4WDモデルが160kW(約217ps)というパワーは世界的にみて十分。乗ってみても走りの質感や速さもなかなかでした。