サラリーマン社長で絶対にできなかった
社長の一押しが令和のクラウン大改革を生んだのです。ある種、ブランドの象徴たるフラッグシップカーこそ延命措置されがちなので、サラリーマン社長ほど決断できません。これまた章男氏だからできたことなのです。
その事実は新型16代目クラウンクロスオーバーの開発責任者である皿田明弘チーフエンジニアも証言していますし、私も聞きました。それくらいのトップの英断がなければフラッグシップカーは大きく生まれ変われないのです。
これは出たばかりの新型プリウスもそうです。マジメなプリウスの異例のスーパーカー化は、ある種変化を恐れない章男イズムの表れです。
課長時代に始まったあるプロジェクト
2016年のカンパニー制の導入と、それに伴い2017年に設立されたモータースポーツ直系のスポーツカーブランド、GRカンパニーの誕生も印象的です。
特に一連のGR関連の「走り味改革」は章男氏なしではありえなかったと思います。
そもそもGRの元である「ガズーレーシング」という不思議なネーミングからして豊田氏なしではありえなかったはずです。20年以上前の業務改善支援室課長時代にプロジェクトを牽引した中古車販売ネットワークの「GAZOO.COM」がきっかけなのです。
“画像”システムと呼ばれていたものをGA(画)ZOO(動物園)にちなんで、GAZOOと名付けたという話ですが、最終的にはトヨタのミッドサイズカンパニーやレクサスカンパニーと並ぶGRカンパニーにまで昇華させてしまうのには驚きました。
ミニバンに過剰な装備
そもそも小沢がGRに最初に触れたのは2010年にミニバンの派生グレードとして登場したヴォクシーとノアのG SPORTS(通称G's)からです。
これはドイツの過酷なコース、ニュルブルクリンクを舞台に「クルマの味づくり」を続けているGAZOO Racingのテストドライバーが「意のままに操る喜び」を味わってもらえるように作ったカスタムチューニングカーシリーズ。
しかし86やスープラなどのリアルスポーツカー向けにGRを設定するならともかく、ミニバンに突如サーキットで鍛えた専用サスペンションや専用エアロパーツを装着しただけでなく、ボディのスポット溶接増し打ちまで敢行して走り味を改革したのには驚きました。
その結果、ファミリー向け多人数乗用ミニバンなのにスポーツセダン並みの上質ハンドリングやブレーキタッチが味わえるようになりました。これは運転好きお父さんにとって確かに朗報です。