博物館の骨格標本がいかに貴重なものか

今回の調べ学習を通じて、「自然界の流れに沿っているように“思える”」「より安価な“気がする”」ことが、本当にそうなのかは、きちんと調べて確認する必要があるのだなと改めて感じた。また、各地の博物館が保管・展示している大型クジラ類の骨格標本がいかに貴重なものなのかということを再確認するきっかけとなった。1990年から2021年までに大阪湾にたどり着いた計7頭のクジラたちは、全て骨格標本となって今もなお保管されている。これらは決して当たり前のことではなく、予算獲得や現場作業、もろもろの調整に奔走した方々のおかげなのだ。貴重な骨格標本がじっくり観察できることに、改めて感謝したい。

最後に、今回の記事は、あくまで生物学者である私の視点からの考察だ。当然、見落としている観点や「素人の浅知恵での勘違い」はあるだろう。それでも「実際はどうなんだろう?」と調べてみることで、新たなことをたくさん知ることができたことは間違いない。

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「調べ学習」ができるのは先人たちの研究があるから

こうした調べ学習ができたのは、先人の研究者たちの地道な活動と、国立科学博物館の「海棲哺乳類ストランディングデータベース」などの知見の蓄積があったからだ。日本国内には、年間300頭ほどのクジラ類が漂着しているとも言われ、多くの方がその都度対応にあたっている。「海棲哺乳類ストランディングデータベース」では、漂着した点にポイントが打たれた地図を見ることができるし、過去の事例の詳細を確認することもできる。

例えば、1987年には漂着したクジラを食べて集団食中毒が起きたこと(参考9)、2008年には定置網に入り込んで死亡したクジラを販売して集団食中毒が起きたこと(参考10)、などの事例も掲載されている。2000年に静岡県内の海岸に生きたマッコウクジラが流れ着いた際には、救助に844万円を費やしたものの、最終的には残念ながら死亡してしまったとの事例も記録されている(参考11)。