初めて世界外交の主導権を握った安倍晋三

安倍晋三は、民主化されないままの中国がアメリカと肩を並べかねない状況で、「民主主義・人権・市場経済」を堅持する「価値観外交」を提案し、インドを仲間に入れ、ヨーロッパとの連携を強化する新しい世界秩序の実現に近づけた。さらに、オバマの民主党、トランプの共和党で迷走を続けるアメリカが世界秩序から孤立しないように手綱を巧妙にとり、日本が歴史上初めて世界外交の主導権を握るという功績を残した。

安倍晋三(写真=首相官邸/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

また、アベノミクスは大成功したとはいえないが、日本経済が復興するきっかけをつかみ、世代格差の解消や女性の社会進出にもかなりの成果を上げた。

吉田、池田、安倍の通算在職日数は、それぞれ、歴代5位、8位、1位であるが、長期政権を維持できたことは、彼らの政治力の賜であるし、相対的に身ぎれいでクリーンな政治家であったことも評価すべきである。

小渕恵三には日本経済を立て直す決意があった

それに続く4人のうち、幣原喜重郎は、GHQとの関係を無難に切り抜けた。ただし、憲法第九条については、通説のようにGHQ側の提案であれば断れる状況になかっただろうが、マッカーサーの証言によると、幣原が内閣に相談せずに提案したということである。この証言が本当ならば、首相が自ら自国の軍備に外国勢力をそそのかして将来にわたって縛りをかけたことになる。これは一種の反逆であり、評価を下げなくてはなるまい。

大平正芳は、最高の外交的センスと教養に裏打ちされた政治家であり、もし、現職中の死がなかったら、日本は安定的な経済成長を維持できたし、外交的にもより尊敬される地位を形成できたと思う。しかし、田中角榮に依存しすぎたがゆえに政治基盤を確立できなかったし、その延長線上で健康を害し無念の死に至ったことは単なる不運でなく彼自身にも責任があるので減点した。

小渕恵三は、バブルの生成と崩壊で傷んだ日本経済を立て直すビジョンを正しく持ち、宮澤喜一蔵相と堺屋太一経済企画庁長官という奇想天外な人事までした。この路線が続いていたら日本経済はここまで劣化しなかった。日韓関係が最も良い時期であり、沖縄への配慮も見事だった。自公連立の成立も小渕の功績だ。